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「ダボ叩いても…セーフティーにしては世界では絶対に勝てない」23歳で“世界一”を2度達成…楽しみすぎるパリ五輪ゴルフ代表・笹生優花の未来
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byKevin C. Cox/Getty Images
posted2024/08/08 17:01
東京大会に続き、2度目の五輪出場となる笹生優花(23歳)。初日は5オーバーと出遅れたが、巻き返す力はある
「ここに優勝トロフィーが入っているんだよ。見せてあげたいけど、今はカギがなくて開けられなくてね」
笹生の父・正和さんはそう言って笑った。アメリカから日本に輸送してきたという歴代優勝者の名が刻まれた「全米女子オープン」の優勝杯。大きく頑丈なボックスと厳重な施錠を見るだけで、これがどれだけ価値のあるものなのかが分かった。
一時帰国した正和さんに案内された広いフロアには、トレーニングルーム、ゴルフクラブをフィッティングできる工房、アプローチとパター練習場、完全防音のショット練習場が備えられていた。すべて娘のためにお金をかけて作った施設であることは聞かなくても理解ができた。
「また勝つなんて誰も思ってなかったでしょ」
正和さんは開口一番、「優花がまた全米女子オープンで勝つなんて誰も思ってなかったでしょ」と、最終日のシーンを振り返った。笹生は5位からのスタートで、ミンジー・リー(オーストラリア)含む首位タイの3人とは3打差。
「優花が6番(パー3)でダボを叩いたんだよね。ミンジーと優花は仲が良くてしょっちゅうご飯も一緒に食べてるし、練習もしているからどんな選手なのかがよく分かってる。だからミンジーは落とさないだろうって。でももしスコアを落としたら、優花が9番までパーを取って、バックナインで3つくらいバーディが取れたらわからない。試合を見ながら周囲に話をしていたら、本当にそうなった」
12、13、15、16番で立て続けにバーディを奪取。特に16番パー4(232ヤード)でのワンオンは、笹生の攻めの性格と姿勢が随所に詰まった一打だった。
「セーフティーにしては世界では絶対に勝てない。見ていたスポンサーさんの社長が、『優花ちゃんは16番はフェアウェイに置いて、セカンド勝負でしょ』と。でも私は3ウッドでワンオン狙うと思いますよと言いました。性格上そうだから。勝つ人はみんな狙って勝つんです。そしたら専属キャディのディランが一番ビックリしていた(笑)。
今年の1月、タイに合宿に行って、全米女子オープンのランカスターCCは、フェアウェイは全体的に狭くなくて、木も少ないしいいコースだからチャンスがあるってキャディも言っていて、優勝をターゲットにしていた。飛ぶ人は曲がるから、運が悪いと林の中に入ってダボを叩いたりもするもの。だから今年は勝負だねって言ってたら、本当に勝ったから驚きでしたよ」
強くの選択の裏には、確固たる勝利への狙いがあった。