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「2位もお金はもらえるけどさ…」漁師育ちの父がプロゴルファーの娘に伝えた“1番になる”重要性「日本代表」を選んだ笹生優花が目指す金メダル
posted2024/08/08 17:03
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph by
Patrick Smith/Getty Images
笹生優花がこだわったという飛距離アップのためのトレーニングは、年を重ねるごとにハードを極めた。
2.5キロのアンクルリストをつけてのランニング、さらに自転車こぎ、8ポンド(約3.6キロ)メディシンボールの投げ合い、1.2キロのバットの素振りを100回、80キロのバーベルを担いでの下半身強化などがメニューだ。
笹生本人から「10キロベストをつけてスクワットを最高で2500回したことがある」と聞いてビックリしたことがある。男子顔負けだ。それでも笹生は弱音を吐くことはなかった。夢を実現するためならば、辛い練習にも耐えられる“才能”を持ち合わせていた。
それにしてもだ。10代の自分の娘にここまで厳しく接することができるだろうか。
厳格な“オヤジ”像が見え隠れするが、背景には正和さんの幼少期の経験が大きく影響している。
漁師の家に生まれ育った父・正和さん
現在は不動産賃貸業が主な仕事だが、正和さんの親は漁師だった。
「もともと、私の家族はみんな漁師。幼稚園のころからアワビやサザエをとって暮らしていたんだから(笑)。小学1年時から高校3年まで、手伝いで毎朝、網を上げに行ってね。伊勢エビを獲る時は朝3時に起きてましたよ。場所? 千葉の外房で鴨川のほうです。水産高校出身なんだけれど、遠洋漁業で捕鯨船に乗ろうと思って無線科に行ったんです。でも親父が倒れて他の仕事をやってくれとなった。ほんとは船に乗りたかったんだけれどね」
その後はJRや建材の仕事などを経て、東京で独立して起業。現在に至るというわけだ。真っすぐで多少ぶっきらぼうな口調だが、冗談話もうまい。漁師町で育ったことを連想させるが、性格も“漁師”仕込みだ。
「漁師って博打みたいなもんです。ガソリンかけて取れなかったら赤字。でも一日で家が建ってしまうほど稼げることがあるのも事実。農家のように農作物ができるのを待つ職業とは違って、浮き沈みが激しいけれど、一攫千金は間違いない」
そこで間髪容れず、「ゴルフの攻め方とまったく同じですね」と伝えると大笑いして、言葉をつないだ。