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「サイ・ヤング賞腕カイケルがロッテに来るけど」バウアーはスキャンダル禍で来日、ドジャースで最多勝ペニーは…メジャー大物投手の日本成績
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byElsa,Adam Hagy/Getty Images
posted2024/08/01 11:02
サイ・ヤング賞受賞経験のあるダラス・カイケルとトレバー・バウアー。メジャーで一線級だった投手が日本に来て残した成績は?
この年はコロナ禍で60試合しかないショートシーズンとなったが、11試合に投げ6勝2敗、防御率1.99という好成績を残す。63.1回を投げて被本塁打はわずかに2本、打たせて取る投球が冴えわたった。
しかしダラス・カイケルがMLB屈指の先発投手だったのは、ここまでだった。
翌年ホワイトソックスで9勝9敗、防御率5.28に終わると、以後、ダイヤモンドバックス、レンジャーズ、ツインズとチームを渡り歩いたが、全くの不振。今季はブルワーズで0勝0敗、防御率5.40に終わり、7月15日にDFA、事実上の戦力外になっていた。
数字的には「盛りを過ぎた先発投手」という事実
MLB通算では103勝92敗、防御率4.04だが、アストロズ時代だけだと76勝63敗、防御率3.66。以降の成績は27勝29敗ながら、防御率は5.03まで落ちていた。
もともと速球投手ではないから、球速の低下は気にする必要はないだろう。ただしアストロズ時代は2.60だったBB9(9イニング当たりの与四球数)が、それ以降は3.42と下落している。
36歳のカイケルは、数字的には明らかに「盛りを過ぎた先発投手」だ。NPBのレベルが上がっているといわれる中で、どこまで期待できるのか――そこが焦点となる。
ニューカムにバウアー…サイ・ヤング賞腕はどんな実績?
サイ・ヤング賞を獲得して、NPBでプレーした投手はカイケルで3人目。カッコ内はサイ・ヤング賞受賞年、成績はNPBでのもの。
ニューカム(1956年ドジャース)
1962年:中日1試0勝0敗4回、率4.50
バウアー(2020年レッズ)
2023年:DeNA19試10勝4敗130.2回、率2.76
カイケル(2015年アストロズ)
2024年:ロッテ
ドン・ニューカムは初代のサイ・ヤング賞受賞投手。1956年ドジャースで27勝を挙げた。しかし1960年限りで引退。62年、酒屋の主に収まっていたニューカムを中日が勧誘し現役復帰させた。しかしニューカムが「投手としてはもう無理だ」と言ったので打者として起用。12本塁打、打率.262を記録した。登板は1回だけに終わった。
要するに当時のNPBは引退した元投手が打者で通用するほど、MLBとのレベルの差があったということになろう。なお、ニューカムはMLBで149勝を挙げている。NPBに来たメジャーリーガーとしてはいまだに最多だ。
昨年のトレバー・バウアーは記憶に新しい。