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「ショックでした」高橋藍が初体験した“痛い”を超えた感覚…ドクターも「ミラクルだ」と驚いた大ケガからの回復「すべてはパリ五輪のため」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAsami Enomoto
posted2024/07/29 17:02
バレーボール男子日本代表の若きエース・高橋藍(22歳)
「ショックでした……。足をつけない、“痛い”を超えた感覚は初めてでした。でも僕的には骨は大丈夫だろう、と。パリは、できるだろうなと思っていました」
本人の読み通り、幸いにも最悪の事態は免れたが、診断は軽いものではなかった。
「靭帯が1本は切れちゃっていて、もう1本は損傷だったので、ほぼ2本ない状態。しかも1本は骨片ごと剥がれていたので、ドクターには長引くと言われました。完全に戻るには2カ月は待ってほしいって」
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試合は高橋の離脱で流れが変わり、3セットを連取され逆転負け。正確なつなぎや巧みなリバウンドなど数字に表れない部分でも、高橋がいかにコート内をスムーズに回していたのかが、皮肉にも露わになった。
翌日、高橋は松葉杖をついて体育館に現れた。腫れあがった左足はガチガチに固定され、隙間から素足の指がのぞいた。痛々しい姿とは対照的に、「すみません」と言いながら見せた少し恥ずかしそうな笑顔は、既に切り替えられているようにも見えた。
「いい休みだ、と考えることにしました。僕がまず照準を合わせるのは、もちろんオリンピックですし、モンツァでもプレーオフにいいコンディションで出られればいい。この間にできる強化をしようという考えになっていました。やってしまったことは、切り替えないと仕方ない。いい方向に考えるようにしています。それに、昔から人の前で弱さを見せない、できないところとかも見せない、そういう性格なので(笑)」
セリエAの決勝進出に貢献し、自分が成長していると実感。
ドクターとトレーナーも驚き「ミラクルだ」
高橋は驚異的な回復で周囲を驚かせた。当初は1カ月後にレシーブ練習を始める目処だったが、2週間後には開始し2月14日のミラノ戦で後衛のみの途中出場を果たす。チームが5位でプレーオフに進出すると、3月10日の試合で先発にも復帰した。
「ドクターとトレーナーが『ミラクルだ』と一番驚いていました(笑)」
プレーオフでは勝負強さが増していった。セット終盤になるほどセッターのフェルナンド・クレリングは高橋にトスを集めた。準決勝ではレギュラーシーズン1位のトレンティーノを相手に2連敗の崖っぷちから3連勝(3戦先勝)。第5戦はフルセットの末、最終セット15-15から高橋が立て続けにスパイクを決め決勝進出に導いた。
決勝ではペルージャに敗れ優勝には届かなかったが、セリエAでの3季目を終えて帰国した高橋には自信があふれていた。
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