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「ショックでした」高橋藍が初体験した“痛い”を超えた感覚…ドクターも「ミラクルだ」と驚いた大ケガからの回復「すべてはパリ五輪のため」
posted2024/07/29 17:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Asami Enomoto
発売中のNumber1101号[苦難の道もエネルギーに]高橋藍「勝負を決めるエースになる」より内容を一部抜粋してお届けします。
“ラン・タカハシ劇場”から一転
我慢、我慢……すべてはパリ五輪のため。
自分にそう言い聞かせながら、高橋藍はコートを見つめていた。
パリ五輪の前哨戦でもあった今年のネーションズリーグ(VNL)で、バレーボール男子日本代表は、主要な国際大会では52年ぶりとなる決勝進出を果たした。その快挙の瞬間、高橋はスポットライトの当たらないスタンドにいた。
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高橋は19歳だった2021年に日本代表にデビューすると、瞬く間にエース・石川祐希の対角の座を射止め、その年の東京五輪では全試合に先発出場。以来ずっとスポットライトの当たる場所を、猛スピードで成長しながら駆け抜けてきた。
その高橋が今年は2度、立ち止まることを余儀なくされた。
発端は1月24日に行われたイタリア・セリエAのモンツァ対ヴェローナ戦。その試合はまさに“ラン・タカハシ劇場”だった。あの瞬間までは――。
試合開始と同時に、モンツァの攻守の軸である高橋が強烈なサービスエースを決める。次は、バックアタックを打つと見せかけてトスを上げる“フェイクセット”を披露し2-0。鮮やかなスタートダッシュで主導権を握った。第2セットもショートサーブで2本のエースを奪うなどコートを支配し、2セットを連取した。
だが、第3セット17-16の場面で、レフトからスパイクを打った高橋が着地の瞬間、崩れ落ちた。相手ブロッカーの足の上に乗り、左足首をひねってしまったのだ。審判台に仰向けにもたれかかり、左足を宙に浮かせたまま、苦痛に顔を歪めた。
「ショックでした…」
ちょうど取材でモンツァを訪れていた筆者は目の前の光景に背筋が凍った。立ち上がるどころか、足をつくことさえできないまま時間が流れていく。一体どれほどの怪我なのか。パリ五輪は……。最悪の事態も頭をよぎった。
両足を浮かせたままチームメイトに運ばれ、ベンチに寝かされている間、高橋はずっと両手で顔を覆っていた。
5月の帰国後のインタビューで改めて、あの時の心境を聞いた。