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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「同じ階級の強い人は全員倒す」那須川天心25歳が語った壮大なビジョン…“井上尚弥vsネリ”から刺激も「東京ドームに立つことが目的じゃない」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/07/17 11:04
4人の日本人世界王者が君臨する“バンタム級黄金時代”にあって、25歳の那須川天心はいかなる野心を抱いているのか
「本当に一回一回のスパーリングが勝負だと思っている。練習と試合を別々には考えていない。心構えとか全く一緒なので、彼らとスパーリングをするだけでもすごく充実していますね」
前戦から6カ月のインターバルがあるが、その間もスパーリングを重ねることで“実戦経験”を積んでいた、ということか。さらに天心は続ける。
「人は満足したら終わりますから。慢心や過信が成長を止める。武尊選手に勝ったときも『良かった~』とは思ったけど、すぐ『よし、次!』みたいな気持ちになりましたからね。燃え尽き症候群? なかったですね。ボクシングというものがあって本当に良かった」
真に尊いものはチャンピオンベルトではなく…
天心が照準を定めるバンタム級のトップ戦線は、4団体とも日本人ボクサーが世界王者という“黄金時代”を迎えている。さらに中谷潤人(M・T)と武居由樹(大橋)、西田凌佑(六島)は現在もいまだ無敗のままだ。その中に割って入ろうと画策する天心は、野心に満ちた笑みを浮かべた。
「とりあえず同じ階級の強い人は全員倒す。同じ階級にチャンピオンが何人も並んでいるのは、果たしていいことなのかなと思うので。もちろん、もっと自分の実力をつけないと、(具体的なことは)まだ何も言えないですけどね」
キックボクサー時代、天心はチャンピオンベルトを誇示することを嫌った。その価値観は現在も変わっていないようだ。
「ぶっちゃけ、世界チャンピオンになったから何? という感じだった。獲ったベルトを並べて写真に収まるのは、自分は違うなって」
尊いのはベルトよりも自分、そして対戦相手と作り上げる「作品」――その価値観を世にアピールするためには、逆説的だがベルトを手にするしかない。そうすれば、自分自身がベルト以上の価値を持つことを簡単に証明できる。
「世間では『ベルトを巻いているから強い』という認識じゃないですか。そういうベルト至上主義の人たちを納得させるためにも、自分がベルトをとって、いずれはひとつ(統一)にしないといけない。そうすれば、日本はメッチャ盛り上がるんじゃないですか」
天心が口にすると、大言壮語もなぜかリアリティを帯びてくる。外野から何を言われようと、つまりは「関係ないっしょ、気持ちっしょ!」に尽きるのかもしれない。
<前編とあわせてお読みください>