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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「同じ階級の強い人は全員倒す」那須川天心25歳が語った壮大なビジョン…“井上尚弥vsネリ”から刺激も「東京ドームに立つことが目的じゃない」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/07/17 11:04
4人の日本人世界王者が君臨する“バンタム級黄金時代”にあって、25歳の那須川天心はいかなる野心を抱いているのか
「東京ドームに立つ」だけじゃ意味がない
5月6日、個展の最終日を終えてから観戦した井上尚弥とルイス・ネリの一戦や、新世界王者となった武居由樹の試合からも大きな刺激を受けた。34年ぶりに東京ドームで開催されたボクシングのビッグマッチだ。1990年にマイク・タイソンがジェームス・ダグラスに敗れたとき、天心はもちろん生まれていないが、歴史的な文脈とはまた違った熱気を肌で感じていた。
「昔からずっとボクシングを見ている人からしたら感慨深い大会だったと思うけど、僕はあんまりそういう事情がわからない。ただ、東京ドームでやるということで、素直にボクシングの熱が高まっているんだなと再認識できた感じです」
その熱を生み出すサークルの中には自分がいることも自覚している。
「僕があまりボクシングを見てこなかっただけかもしれないけど、常に注目されている競技ではなかったような印象があります。自分が転向したことでいろんな賛否両論もあるし、それも含めて盛り上がってきているのかな、という気もしています」
天心と東京ドームといえば、2022年6月19日に行われた武尊との“世紀の大一番”を抜きに語ることはできない。5万6399名(主催者発表)という超満員の大観衆で埋めつくされた東京ドームは壮観だった。とはいえ、キックボクシングはキックボクシングで、ボクシングはボクシング。同じ会場での大会だったとはいえ、一概には比べられないという。
「あの試合は僕と武尊選手の、そしてRISEとK-1の戦争みたいなところがありましたね。競技者として、あの作品を生み出したことには絶対的な自信を持っています」
近い将来、もし再び東京ドームでボクシングの興行が打たれたら――そんな仮定の話を振ると、天心は「自分がやるしかない」と身を乗り出した。
「ただ、東京ドームのリングに立つこと自体を目的とするのは好きじゃない。アーティストでも東京ドームでライブをして胸を張る人がいるじゃないですか。僕はそうじゃないと思う。問題はその内容で、やるだけなら興味がない。どんな熱狂が生まれて、その中でボクサーとしてどういう表現をしたか。そこが重要だと思うんですよね」