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「まさか全球直球とは…」29年前、野茂英雄がオールスターで投げた“25球の衝撃”「打てるもんじゃない」なぜ6人の対戦打者は驚いたか?
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2024/07/17 06:00
1995年、初出場のオールスターで投球する野茂英雄
1-1からの直球を仕留めきれずファール。最後はフルカウントからのフォークに空振り三振となった。
「彼は自分の才能を信じている。だからすごい」
1回は13球を投げ、1安打2三振も要所ではフォークボールを投げ込んだ。だが、この配球には意味もあった。
「やっぱりキャッチャーの(マイク・)ピアザも三振を取れば、お客さんが盛り上がるのがわかっているし、僕も彼の出すサインを見れば(その意味は)わかるし、絶対カーブなんかはサイン出さないのはわかっていますから。あれ(フォークボール)はお客さんのためのサインだと思いますよ」
まさかの“全球直球”に、対戦打者も驚いた
直球とフォークボールで奪三振の山を築き、全米で「NOMO MANIA」なる言葉も生まれた。ファンが球宴の場で野茂に期待するのは、一世を風靡したフォークボールであり奪三振ショーだ。そんなピアザの考えを読み取った上での配球は野茂らしい配慮と感じるが、2回は自分が楽しむことだけを考えた。だが、考えていることは相手も同じだった。
「彼にはえげつないフォークボールがある。だからストレートを狙っていたよ」
こう話したのは4番のフランク・トーマス(ホワイトソックス)。当時、最強打者と謳われたスラッガーに対しては、野茂の思いも強かった。
「力のあるバッターだし、このバッターは真っ直ぐで、と思っていました」
直球を3球続け、カウントは2-1。ここで野茂は初めてピアザのサインに首を振った。選択したのはもちろん直球。結果は捕邪飛となった。
「まさか全球直球でくるとは思わなかった。すごい度胸だな」(トーマス)
「あの雰囲気で楽しんで投げられた。自分自身、満足しています」(野茂)