高校球界に、能力の高い3年生遊撃手の人材が、全国に何人もいる今年。

　それでも、見ていたスカウトの中には、「1か2……じゃないですかねぇ」と、齋藤遊撃手の見立てを明かした方もいた。

　試合は7回、齋藤遊撃手の走者一掃三塁打で金沢高が3点を加えると、そのまま4対0で終わった。

　春の北信越大会出場の帝京長岡高を無失点で抑えた金沢高のエース・山本悠人投手のピッチングもお見事だった。わかっていても、追いかけてしまう高速カットボールと、高校生には攻略困難なチェンジアップ。一級品の飛び道具は、夏も石川の強豪たちを手こずらせるだろう。

「今日の試合は、新潟の夏予選の相手に置き換えて投げました。たとえば、右の強打者だったら、日本文理の誰々を相手にするつもりで攻め方を考えたり……結果、負けましたけど、自分としては、レベルの高いチームを相手に、夏の予行演習ができたので、有意義な試合になったと思います」

　目先の勝ち負けは問題じゃない。茨木投手の視野の中には、もっと先の「大一番」が見えかけている。

高3の選手には「夏」は最後のオーディションの場

　全国のそこここで、もう夏の県大会は始まっている。

「あれだけのサイズがあって、不利なカウントを立て直せる器用さもあるのは、間違いなく稀少価値ですね。バッティングを見ても、まだ上半身の強さで振ってるようだし、この先、下半身を強化していって、体重移動にスピードがついて、強い踏み込みができるようになったら、自然と150キロ投げられるピッチャーになりますよ」

　茨木投手が隠し持っているポテンシャルは、スカウトたちの大きな楽しみになっている。

「ハートもかなり強そうに見えるけど、あとは、夏の予選の修羅場で、どんな顔して投げられるかですね」

　プロ野球を目指す3年生の球児たちにとって、「夏」は最後のオーディションの場になる。夏の高校野球には、そうした側面もあって、スタンドには彼らの最後の見立てをと目を凝らすスカウトたちが居並ぶ。

　認めさせたい者たちと、見極めねばならない者たち。

　地区予選から甲子園の本戦、およそ50日の「もう一つの闘い」が、スタンドとグラウンドの間で火花を散らす。