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敏腕スカウト「(全国でも)1番か2番じゃないですか」…北陸で見つけた181cm、76kg隠れた“プロ注遊撃手”「投高打低のプロであのスピードは魅力」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byチーム提供
posted2024/07/16 06:00
金沢高の「プロ注」齋藤大翔遊撃手のバッティング。スカウト評は「全国でも1番か2番じゃないですか」
スカウト「いちばんの魅力はあのスピード」
1年生の頃からずっと齋藤選手を追いかけているというスカウトが、自分の息子を自慢するように嬉しそうに語る。
「春は、なんとなく踏み込んで、ポンと合わせにいくような打ち方だったのが、ガラッと変わってますね。私、(ネット裏ではなく)横から見てましたけど、左足がガッと強く踏み込めて、強く打ち返せてた。あのスタイルができるようになれば、しめたものですね」
スカウト待望の変身だった。
「齋藤君の場合は、いちばんの魅力はあのスピードです。ホームラン数や打率が下降傾向の今のプロ野球ですから、シングルヒットを二塁打にできて、二塁打を三塁打にできるようなスピードを持った野手は、ものすごく貴重な存在なんです。その上、守りも良くなってるでしょ」
そのフィールディングだ。
この日、ゴロ3つ、フライ1つを危なげなくさばいてみせた。
ムダに急がない、ムリに強く投げようとし過ぎない。バウンドの合わせ方に余裕があるのは、捕ればアウトの「猛肩」という武器があるからか。スピードより「確かさ」優先の動きに見えた。
「確かに、そのへんは変わりましたね。以前は、動きのスピードで目立ちたかったのか、なんでも前で勝負にいって、ギャンブルチックな守り方してましたから」
名実共にディフェンスリーダーができて、金沢高・武部佳太監督も、ホッとしているように見えた。
この5月、金沢高の室内練習場で齋藤遊撃手の練習ぶりを見せていただいたことがある。
緩いゴロにしっかり捕球点を作り、右耳の横に明確なトップを作ってネットスローを繰り返す。いつ終わるともわからない基礎練習の反復を、齋藤遊撃手が丁寧に、丹念に、続けていたのを思い出す。
「そうなんです。ここ(金沢高)のいいのは、基本の練習を、そこまでやるか!っていうぐらい、しつこく、しつこく、選手に擦り込むように練習できることなんです」
スカウトが感心するほどの基本の反復が、飛び抜けたスピードという持ち味に、「確かさ」というもうひとつの価値を根付かせつつあるようだ。