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「眉毛? 隠せないですから」“優等生じゃない大器”バイエルン伊藤洋輝「あ、俺は大丈夫です」サウナを断られた原口元気が大化けを予言した日
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byS. Mellar/FC Bayern,Getty Images
posted2024/07/17 11:07
バイエルン合流直後の会見で決意に満ちた表情の伊藤洋輝。意外と知らない日本代表DFの素顔とは?
「キミはなぜ、試合になるとあんなに良いパフォーマンスを出せるんだ?」
伊藤は言う。
「練習で手を抜いているわけではないですよ。練習でしっかりやらないといけないということもわかっています。でも、練習でどんなに良くても、試合で良いパフォーマンスを出せないと意味がないという考えが向こうにはあるから。試合にフレッシュな状態で臨むためにはどうしたらいいのか、というのは常に考えていますね」
伊藤にはある種の大胆さと鈍感力がある。それがドイツの環境に違和感なく溶け込めた理由だし、バイエルンの人事責任者であるマックス・エベール取締役が評価したところなのだ。
「ただ、『そのようなマインドでいられるためには、どうしたらいいんですか?』と聞かれると、困ります。僕にもわからない。そもそもの性格の問題だと思うんですよね。だから、目のことに限らず、一貫して僕はそういうスタンスなんです」
憧れのバイエルンで「契約延長を勝ち取れるように」
きわめて冷静に語る伊藤だが、いよいよ始まったバイエルンでの戦いについて語るときには胸を躍らせる。
「ここからが新しいスタートだし、楽しみですよね。もちろん、結果を残せなければ、『放出すべき選手』と言われるかもしれません。でも、自分は『バイエルンに必要な選手だ』と毎年言われる選手になりたいんです。ここではお金で買えない経験ができるから、すごく楽しみで。個人的にはバイエルンでいつまででもプレーしたい。そう思えるくらい、バイエルンは憧れのクラブだったんです。クラブから発表があったように4年契約なので、まずは、3年後までにしっかり契約延長を勝ち取れるようにやっていきたいです」
これまでも、その時点でヨーロッパのトップ10に入るようなクラブでプレーするチャンスを得た日本人選手は何人かいた。ただ、そのなかで契約延長を勝ち取ったのは、アーセナルの冨安健洋くらいしかいない。
伊藤がまず目指さないといけないのは、タイトル獲得はもちろん、契約延長のオファーを受けるような選手になることだろう。ビッククラブに入ることよりも、そこで求められ続けることの方が遥かに難しい。それがサッカー界の真理なのだから。
7月16日、伊藤はバイエルンでの入団会見に臨んだ。
親日家セルジュ・ニャブリからはすでにミュンヘンにあるオススメの日本食レストランを教えられ、EURO組でまだ合流していないトーマス・ミュラーからはInstagramのアカウントをフォローされたことなどを明かした。そのなかで、ウィットに富んだ伊藤のこんな発言は、すでにドイツメディアで注目を集めている。
「僕は典型的な日本人とは違うかもしれないです。だけど、チームのために、100%出せる部分や勤勉さは日本人の本当の強さだと思うので。日本人の良さでも、チームに良い影響を与えられるようにやっていければ」
「一緒にサウナへ行く?」「あ、俺は大丈夫です」
今からおよそ2年前のこと――。
後にシュツットガルトでチームメイトとして戦うことになるとは誰も予想していなかった時期に、原口元気が確信めいて語ったことがある。