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「水泳自体を諦めていた」驚きの告白も…“天才少女”と呼ばれた今井月がスランプを乗り越えるまでの大決断…指導者も練習環境も全てを変えた日 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTsutomu Kishimoto/PICSPORT

posted2024/07/22 11:02

「水泳自体を諦めていた」驚きの告白も…“天才少女”と呼ばれた今井月がスランプを乗り越えるまでの大決断…指導者も練習環境も全てを変えた日<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto/PICSPORT

若くして注目を浴び、日本代表としてリオ五輪に出場した競泳の今井月(現在23歳)

「チームメイトも快く受け入れてくれましたし、飯塚先生の、あまり水泳以外のことに干渉してこないところとか、距離感とかもよかったです。フラットに、対等に接してくれるので私もいろいろ言いやすかったですし、変に気を遣うことなく水泳ができていたと思います。

 最初、飯塚先生のもとで練習するとなったときに2人でミーティングをしました。私は水中での感覚みたいなものを気にするタイプだったので、あまり筋力を増やしたくないと思っていたんですけど、飯塚先生からウェイトトレーニングを本格的に始めようと言われました。大学ではそれを言われても嫌だったんですけど、信じてみようと思いました」

なんと8年ぶりの記録更新、6年ぶりの代表復帰

 指導者と環境を変えたことで、止まっていた時計は動き始めた。2022年、日本選手権200m平泳ぎで初めて優勝を果たしたのである。

 2023年の日本選手権でも優勝し、連覇を達成。タイムは派遣標準記録を上回る2分22秒98。中学3年生のときに芝辻コーチのもとで出した自己記録を8年ぶりに更新した。

 同年夏の世界選手権代表にも選出された。実に6年ぶりの日本代表復帰だった。

 あらためて再起を果たせた理由をこう語る。

「この環境にいて潰れていくのは嫌だなって思っていました。プライドも許さなかったですし、絶対こんなはずじゃないって思ってましたね」

 泳ぐことにまっすぐ向き合えるようになった今井の目線は、すでに翌年を見据えていた。パリ五輪である。2016年のリオデジャネイロ五輪以来、8年ぶりの出場を期した。

 2024年3月、パリ五輪代表選考会を迎えた。それはひそかにあたためていた長期的な計画の第一歩となる大会であるはずだった。

《インタビュー第3回に続く》

(撮影=岸本勉/PICSPORT)

#3に続く
「もし覚悟が決まったら…」今井月23歳が悩んだ“パリ五輪落選からの2週間”…打ち明けた“進路”への思い「最後は自分が決めることなので」

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