カナダ戦では、2セットを連取した後の第3セット、3対7と先行された場面で岩崎に代わって関が投入された。

カナダ戦の関　©︎Volleyball World

　ややレフトに偏りがちだった攻撃から、逆サイドの林琴奈、山田二千華がライト側に走り込む速攻など攻撃に変化が生まれた。外から見ていた関からすれば「この攻撃が使える」と判断し、さらに自らが得意とするミドルを絡めてサイドへの警戒を手薄にする狙いがあった。

　まさにそれぞれの長所を融合させる戦いぶりではあったが、結果的にこのセットを取り切れず、再び第4セットから岩崎が戻るも、勢いに乗ったカナダを前に、関のトスワークから「自分ももっと使っていかないと」と考えていたミドルからの攻撃も、相手ディフェンスへの意識が上回って効果的に使うことができず、古賀が「20点以降はほとんどミドルの攻撃がなかった」という展開を招き、逆転負けを喫した。

　悔しさを噛みしめ、受け止め、もっとこうできたのではないかと自分に言い聞かせるように繰り返す岩崎は、「これで終わりではない」と前を向く。

「チームとしてやるべきことは一緒だけれど、私とセナが同じことをする必要はない。私は私のいいところ、セナはセナ、珠己は珠己のいいところを出し合って、とにかく目の前の一戦、次の試合に集中して臨みたいです」

6大会連続14回目のオリンピック出場権を獲得したバレーボール女子日本代表。ただ、VNL福岡ラウンド終了時点の世界ランキングがパリ五輪の組み分け抽選のポット分けに影響するため、現在7位の日本は残り2戦で「5位以内」へのランクアップを狙う　©︎Volleyball World

　カナダ戦の翌日、世界ランキングに伴い、2試合を残して日本のパリ五輪出場は決まった。だが、これが終わりではなく、始まりでもある。

　岩崎、関、松井。3人のセッターが膝を突き合わせ、策を練る。五輪出場が決まったからとはいえ、残る試合をどう戦うか。日本の武器、形を構築させるために、消化試合など1つも存在しない。

　だからこそ、日々のセッターミーティングの成果はどんな形で発揮されるのか。1つ1つの知恵と経験が、五輪へとつながっていく。