メインセッターからセカンドセッターへ。どちらも大事な役割と理解しつつも、最初は“できない自分”ばかりに目が向いた。

　チャンスが来れば「これを絶対につかまなければいけない」と前のめりになりすぎて、本来の持ち味も活かせず、レフトのトスも伸びや高さがなく、アタッカーがブロックに捕まるケースが増える。

　VNL2週目の中国・マカオラウンドでベンチ入りメンバーからも外れた時は、トレーナーの前で号泣するほど「メンタル面はズタボロだった」。

　何をやってもうまくいかない。
　もうチャンスなど巡ってこない。

　落ちるところまで落ちたと関は言うが、その時間があったから「自らがやるべきことは他にもある」と、前を向くことができたと明かす。

「何より今は、日本代表がオリンピックに行くことが一番大事。もちろん自分がアピールしたい気持ちもありますけど、自分は自分、みんなそれぞれ持ち味も違う。だったらセッターも1つのチームとして、伝えるべきことは伝える。言わずに後悔する、やらずに後悔するのは絶対に嫌だったから、セッターミーティングをするようにしました」

メンバー外になったことで、自らの役割を整理することができたと話した関（写真はVNL6勝目を飾ったマカオラウンド最終戦）　©︎Volleyball World

松井を含めた3人で“セッターミーティング”

　試合当日。岩崎と関、福岡大会では14名の登録からは外れた松井珠己（26歳）のセッター3人で、前夜の試合の反省と、迎える次戦に向けての戦術を話し合う。そこで関は、相手のディフェンスやそこに対しての攻撃プランなど映像を見て気づいたことをノートに書き留め、それをすべて伝えてきた。岩崎は関の助言に「支えられてきた」と話す。

「OQT（昨年の五輪予選）を戦ったのはセナ（関）と珠己で、2人からコートに立ちたいという思いの強さは練習から感じるし、私もそういう経験をしてきたからよくわかるんです。むしろ、私が若い頃は競争、競争で自分が残りたいから周りに弱音も吐けなかった。その状況がしんどかったんですけど、セナも珠己も『あのトスがよかった』とか『この場面では絶対にこの攻撃が使える』とか、言葉をかけてくれる。それがすごくありがたい。今は私がコートに立つ時間が長いですけど、一緒に戦ってくれている2人の存在に、本当に助けられているし、支えられています」

韓国戦、第1セットからポイントを奪う荒木。この伏線には関から岩崎への助言があった　©︎JIJI PRESS

　韓国戦では、関の「（日本の）セッターが前衛にいるローテーションで、Aクイックでプッシュをしたら絶対に決まる」という助言を、岩崎がミドルブロッカー荒木彩花に対して実践した。思惑通りに得点につながると、荒木や岩崎以上にベンチで喜ぶ関の姿があった。

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