バレーボールPRESSBACK NUMBER
「メンタルはズタボロ」屈辱“ベンチ外”宣告に号泣も…先発セッターを外れた関菜々巳25歳が再起するまで「女子バレーパリ五輪決定の舞台ウラ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT
posted2024/06/15 17:01
VNLではセカンドセッターとしての役割を全うする関菜々巳(25歳)。正セッターを務める岩崎こよみへの想いを語った
味方の返球や、相手ブロックの位置。トスをどのタイミングでどこに上げるかという判断基準はいくつもある中、得点を獲らせるためにどうするか。目まぐるしく攻守が変わる中で瞬時に判断、決断が求められる。ただでさえ考えることだらけのうえに、上がったレシーブをつなげるべくコート内での運動量も求められ、さらに勝敗の責まで負わされる。最も多くボールに触るセッターというポジションは、実に酷な役回りだ。
だからこそ、その苦しさを少しでも分かち合いたい。
タイムアウトやセット間、ベンチに引き上げてくる岩崎の肩にタオルと、短い言葉をかけるのは関菜々巳(25歳)だ。アップゾーンでは、リザーブの関も共に戦っていた。
関は昨秋の五輪予選では正セッターとしてコートに立ち続けた。パリ五輪まであと一歩と迫りながらもトルコ、ブラジルにフルセットで敗れて出場権を逃すと、「自分のトスで活かせなかった」と反省の弁を述べながら、ミックスゾーンで涙を流した。
五輪前年の予選で正セッターを務めたのだから、ラストチャンスとなるネーションズリーグ(VNL)でも関が司令塔としてコートに立つのだろう――大半の見方に反し、初戦のトルコ戦から正セッターを務めたのは岩崎だった。
その理由を、誰よりも関が理解していた。
「今の私には、あのバレーはできないんです」
「(岩崎は)まず落ち着きがあるし、レフトがあれだけ気持ちよさそうに打てているのは、こよさんのトスだから。今の私には、あのバレー、あの組み立てはできないんです。去年も紗理那さんの高さを活かすために、今年の合宿が始まってからも同じようにチャレンジしてきたけれど、私にはできなかった。でも、こよさんのトスは紗理那さんの高さを活かして、打ちたい場所、打ちたい時に持っていけるから、紗理那さんがいい意味で目立てる。こよさんのトスがあっての紗理那さんで、今の(日本の)強さなんです」