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「キャプテンは古賀、お前しかいない!」眞鍋政義監督が古賀紗理那に主将を託したワケ「俺はお前をリオ五輪で落とした。でも…いっしょにやってくれへんか」
text by
眞鍋政義Masayoshi Manabe
photograph byYuki Suenaga
posted2024/06/20 11:00
パリ五輪出場を決めたバレーボール女子日本代表のキャプテンを務める古賀紗理那。真鍋政義監督はなぜ、古賀に主将を託したのか
理由は、ひたすらエリートコースを歩んできたタイプの選手よりも、苦しい思いをしてきた選手のほうがキャプテンには向いているからだ。図らずもオリンピックでは2回連続して挫折を味わうことになってしまったが、それもプラスに働くはずだ。
もうひとつの理由はオリンピック予選の経験だ。東京2020オリンピックは開催国枠で出場したため、日本が予選に挑むのはじつに7年ぶり。予選の厳しさを知っている選手はほとんどが引退してしまった。古賀の経験と、オリンピックにかける執念がチームに目に見えない力を与えるはず。
あらゆる意味でキャプテンは古賀しかいない。古賀にキャプテンを引き受けてもらうことから、パリへの道は始まるーー。
そこで私はまず古賀と会って話をしてみることにした。Vリーグのシーズンが終盤に差し掛かった2月、NECの金子隆行監督に連絡して、試合後に体育館で会う段取りをつけた。リオでのことがあるから、古賀は私に対しては複雑な思いもあるだろう。 そのことも含めて率直に話をした。
「俺はおまえをリオの前に落とした。東京でも捻挫して悔しい思いをしたやろう。でも、それをパリで返そう。日本代表のキャプテンは古賀、おまえしかいない。俺といっしょにやってくれへんか」
古賀は真剣な面持ちで私の話を聞いていた。「リオのときのことはもう気にしていません」と言っていたが、キャプテンについては「少し考えさせてください」とのことだった。
数日後に返事が来て、古賀がキャプテンを引き受けてくれることになった。まずは一安心である。
その上で彼女に提案したのが、背番号を「3」に変えることだった。東京オリンピ ックで古賀は2番をつけていたが、その前のエース、木村沙織は3番をつけていた。じつはその前に3番をつけていたのが竹下佳江。日本女子の3番には象徴的な意味がある。また、東京オリンピックにけりをつけて、心機一転してほしいという思いもあった。
古賀は「別に背番号なんか関係ないですよ」と言っていたが、最後は私のほうから頼む形で「3番にしよう」ということになった。
眞鍋監督が次に説得とした選手
キャプテンには二種類あり、言葉でチームを鼓舞するタイプと、プレーで引っ張る タイプがいる。古賀は少し口下手なところがあり、どちらかと言えば後者のタイプ。 そういう意味でも木村沙織によく似ている......と思っていたのだが、古賀はキャプテンになってから大きく成長した。それについてはまたあとで述べたいと思う。
エースとキャプテン。ジグソーパズルの最初の、そして一番大事なピースが手に入った。次に私が説得にあたったのは、古賀に匹敵する才能を持つスパイカー、井上愛里沙だった。
<続く>