猛牛のささやきBACK NUMBER
日本ハム移籍でもう6勝「バットを持つと輝き増す」山崎福也…オリックス時代の“相棒”が語る「サチさんの素顔」「由伸、宮城へ秘めた思い」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2024/06/06 11:02
阪神との交流戦では自ら先制のタイムリーを放った
敵となった「サチさん」へ
争奪戦のさなかも稲富から移籍について聞くことはなかったが、一緒に食事に行った際、山崎に「どう思う?」と聞かれたことがあった。
「僕はまったく経験がないことなんで(苦笑)、『思うようにしてください』と。『できれば残ってほしいですけど』とは言いましたけど(笑)」
移籍決定後は、「野球以外でも仲良くさせてもらっていたので、寂しいですけど、サチさんにとってはプラスな移籍なので頑張ってほしいですね。敵になるので、頑張ってほしいと言うのもあれですけど……オリックスの時はほどほどに(苦笑)。他の試合は全然勝ってもらっていいので」とエールを送っていた。
新天地で飛躍
山崎が日本ハムを選んだ決め手は、「僕自身をすごく成長させてくれそうだなと、しっかりと投げられそうだなという感触があった」から。
新天地では背番号18を託されてエース格で迎えられ、本拠地開幕戦の先発を任された。
頼られるほど本領を発揮する投手なのだろう。6勝1敗、防御率もリーグ4位の2.01で、チームを牽引している。
一方、オリックスは苦しんでいる。山本、山崎が移籍で抜け、先発の柱と期待された宮城や山下舜平大、リリーフ陣も平野佳寿や山崎颯一郎、宇田川優希、小木田敦也といった核となる投手が怪我や不調などで一軍にいない。ルーキーや若手、新加入の戦力を総動員して懸命につないでいるが、なかなか白星につながらない。
ブルペン捕手の稲富も慌ただしい毎日だ。まだ経験の浅い投手たちに対して、「当たり前のことですが、練習のサポートだったり、キャッチングの面で、ピッチャーが不安やストレスを極力感じることがないように」と心がけている。
陰で支える裏方の“流儀”
まだ受け慣れていない投手陣と接する中で、山崎との日々の中で培った“人間観察力”が役に立っていると感じる。
「サチさんはすごく人間味のある人なんで。“ザ・野球選手”というか、ピッチャーらしいというか」
負けたり内容が良くなかった登板後のリセットの方法は人それぞれだが、山崎に対しては、野球の話はせず、あえて普段の日常的な会話を心がけた。
「ちょっとバカな話をして、『お前バカだなー』って笑われることがよくあったんですけど、笑ってくれたらこっちも嬉しいし、そういう会話が一つ息抜きになっているのかなと思いながらやっていました」
今も毎日、この投手にはどう接すればいいだろうかと、山崎との日々と重ね合わせながら試行錯誤している。
苦しいチーム状況でも
打線も振るわずチーム事情は苦しいが、「今は誰が8回とか9回とか、誰が勝ちパターンとか、そういうのがなく、誰が行ってもおかしくない状況の中で、みんなが『そこに入るんだ』『ここで結果を残すんだ』という強い思いでいます。新しい選手が辛抱強くカバーしているのは、『オリックスだなー』と感じますね」と稲富は言う。
「噛み合えば、全然、今からでも巻き返せます」
優勝チームを支えてきた裏方の言葉には、説得力がある。