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井上尚弥“PFP1位”激論の真相「英国人記者の発言が…」米リング誌の日本人パネリストが明かす舞台裏と投票内容「井上は胸を張るべきだ」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/05/13 11:04
米リング誌が選定するPFPランキングで1位に返り咲いた井上尚弥。2年前は一票差の大接戦だったが、今回は2位に大差をつけた
2年前、井上はノニト・ドネア(比国)との再戦後に一度はPFP1位に浮上した。その際は2位のオレクサンデル・ウシク(ウクライナ)とわずか1票差の大激戦であり、そんな経緯を経ての1位獲得に理想の高い井上は満足できなかった。
「1票差ですよね? 真のNo.1だとは今でも全然、思っていないです。1票差だったのを、その差をどんどん広げられるようなパフォーマンスができたら、本当に胸を張って自分がNo.1だと言えてくるんじゃないかと思います」
当時はそんなふうに述べていた井上も、今では“世界一のボクサー”と胸を張るべきではないか。今回、井上の1位浮上に票を投じなかったパネリストたちも、世界最高級の実力者であることは認めている。5月18日のウシク対タイソン・フューリー(英)戦、8月3日にクロフォードが予定する4階級制覇挑戦の結果次第でまた順位変化の可能性は残るが、そこでまた2位以下に落ちたとして、井上がやり遂げてきたことの価値が変わるわけではない。
“日本のモンスター”は真の意味で“世界最高のモンスター”に昇華した。欧米では評価が低いとされる軽量級の選手でありながら、井上は31歳にして世界中の多くのファン、関係者から熱いリスペクトを集めるボクサーとしての地位を確立したのである。
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★PFPランキングの論点
「体重が同一と仮定したら誰が一番強いかを決めるランキング」ではなく「全階級を通じて誰が最も優秀なボクサーであるかを経歴と表層上の戦力評価で定めるランキング」。いわばレジュメの比べ合いであり、ハイレベルの比較では対戦相手の質が大きく関わってくる。派手なKO勝ちを収めても、格下を蹴散らしての勝利では大抵の場合、大きな評価は得られない。リングマガジンの他にもESPN.comのそれが同じく注目を集めることが多いが(最新のランキングで井上は2位)、同誌選定のランキングは“最も権威がある”と見られている。
★リング誌の最新PFPランク(現地9日更新)
1位 井上尚弥(日本)
2位 テレンス・クロフォード(米国)
3位 オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)
4位 サウル・アルバレス(メキシコ)
5位 アルツール・ベテルビエフ(ロシア)
6位 ドミトリー・ビボル(ロシア)
7位 エロール・スペンスJr.(米国)
8位 ジャーボンテイ・デービス(米国)
9位 ジェシー・ロドリゲス(米国)
10位 中谷潤人(日本)