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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「ハシは最高の選手だよ。このマフラーを渡してくれ」プレミア電撃移籍から3カ月…橋岡大樹がルートンの英国人たちに愛される理由
posted2024/05/10 17:01
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Yudai Emmei
プレミアリーグのルートン・タウンFCへ電撃移籍――。驚きのニュースから3カ月が過ぎた。サッカー日本代表・橋岡大樹(24歳)は世界最高峰の舞台で懸命にもがいている。来季の行方を占う激しい残留争いに身を置く中で、着実に掴みつつある手応え、そして微かに芽生えた自信とは…。積み重ねてきた思いをNumberWebインタビューで打ち明けた。〈全2回の1回目/後編に続く〉
おそらく、橋岡大樹は世界で唯一のプレーヤーだ。プレミアリーグの大舞台で、怪物が至近距離から全力で振り抜いたシュートを顔面で受け止め、それが自軍のゴールネットを揺らす。そんな貴重で、地獄の体験をした選手なんて他にいない。
必死に体を投げ出す金髪の日本人
4月13日、プレミアリーグ第33節。橋岡が所属するルートンは、アウェーでマンチェスター・シティと戦った。その開始わずか2分のことだった。カウンターのピンチで、こぼれ球がシティの大エースの頭上へ飛んだ。すかさずアーリング・ハーランドは体をねじり、左足でのジャンピングボレーを狙った。
ここに、橋岡が飛び込んだ。シュートコースを塞ぐために、必死に体を投げ出した。ところが大谷翔平の打球のごとき豪速球は、金髪の日本人の顔面を直撃し、そのままルートンのゴールへと吸い込まれた。
エティハド・スタジアムが、いきなり揺れた。5万人を超える大観衆の大半を占めるシティサポーターたちは、プレミア残留争いを続けるルートンの選手とファンに、上から目線で罵声を浴びせた。
「お前らは、チャンピオンシップ(イングランド2部リーグ)のチームだ!」
一方、アウェーチームのサポーターは毛色が異なる。計5点を奪われても、野次を飛ばすことはない。後半36分に一矢報いるゴールが決まれば、懸命に手を叩き、特大の声で愛する選手たちを称えた。