猛牛のささやきBACK NUMBER
〈秋田凱旋〉オリックス吉田輝星「覚醒」への現在地…日本ハム戦だけ弱いのは「優しすぎるから?」「ここから絶対抑え込んでやります」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/05/08 11:04
新天地のオリックスで奮闘中の吉田輝星
伸び代は「まだまだある」
日本ハム時代の吉田も知る厚澤コーチは「天井はまだ見えていない」と話す。
「今すでに戦力として戦ってくれていて、勝ちのところの6、7回とかにも行っているけど、まだまだ伸びしろがあると思わせてくれるピッチャー。抑えて、あ、十分だなと思うこともあるんですが、彼独特の『まだ完成していないな』というところがあります。
何より、根っからの“野球小僧”なんですよね。投げるの大好き、野球大好きというのが一番にある。野球なので打たれることは絶対あって、ずっと0ということはないんですけど、やられても、次の試合は絶対抑えている。失点した次の試合ですごい力を発揮するタイプ。そういう、“根性”とはあまり言いたくないけども、“反骨心”というのかな。非常に強いものを持っています」
一方で、ある課題が見えてきた。日本ハムとの対戦である。
苦しんだ古巣との対戦
古巣との初対戦は、京セラドーム大阪で行われた4月13日の試合。それまでは5試合に登板し被安打、失点ともにわずかに1だった。しかしその日は5点リードの9回表にマウンドに上がると、石井一成に二塁打を打たれ、2死から伏見寅威のタイムリーで1点を返された。郡司裕也にもヒットを許したところで平野佳寿に交代となった。
二度目の対戦はエスコンフィールドでの初登板となった4月27日。0-5とリードされていた8回裏に登板し、4点を奪われた。古巣と対戦する難しさが表れた結果。一度目で半信半疑だった首脳陣も、二度目の登板で確信した。
「もう投げさせんよ(苦笑)」と厚澤コーチ。
それは冗談だが、こう続けた。
「古巣に対してピッチャーは力を発揮するタイプと、あまり発揮しないタイプに分かれるんです。(昨オフ日本ハムを戦力外となりオリックスに加入した)井口和朋は発揮するタイプ。吉田輝星は、今のところ発揮していない。その再確認をしました。調子はいいですよ。ハム戦の失点を省いた防御率、出してみてください」
「トレードで来た子は必ず通る道」
4月27日の4失点で防御率は6.75に跳ね上がったが、日本ハム戦を除いた防御率は1点台だ。
「優しすぎるんです、吉田輝星。他の球団に投げている時のピッチングスタイルじゃなくなっているから。それは、インコースに(打者に)当たってもいいボールを投げろとか、そういう意味じゃない。いつも他のチームに対しては、バッターをやっつけること、打ち取ることだけに集中してやっているんだけど、そこが(日本ハム戦は)できていないように見える。
でもそれは輝星だけじゃないし、輝星が悪いというわけではなくて、言わないだけで得意苦手はみんなあって、我々はそういうのを踏まえて組み立てています。でもやられて損するのは輝星なので、そこを克服できるように、僕らもいろいろ策を練って背中を押そうと思っています。トレードで来た子は必ず通る道なので」