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中国戦で一発退場、西尾隆矢に駆け寄った“3人の選手”「みんなが温かく迎えてくれて…」TV中継には映らなかった“ロッカールームの真実”
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2024/04/19 17:01
中国戦で一発レッドカードの判定を受け、顔を覆いながら退場する西尾隆矢
退場する西尾に駆け寄った“3人の選手”
去り際にギリギリ追いついたのはベンチメンバーのFW内野航太郎、MF川崎颯太、DF大畑歩夢。3人は西尾の肩を叩き、声を掛けた。仲間の苦境、チームの苦境に体が咄嗟に動いていた。
チーム最年少、19歳の筑波大2年生である内野航太郎には、主力がそろった昨年10月のアメリカ遠征に初めて参加した際、西尾が積極的に話しかけてくれた記憶があった。
「食事のときも同じテーブルのことが多くて、一人の人間としてリスペクトがあった。あそこで誰も行かないのは違うと思った」
西尾は今回、4人いる副キャプテンの1人に任命されている。内野の言葉からは西尾がリーダーシップと幅広い視野を持っていることが伝わる。
所属の京都で昨年からチームキャプテンを務める川崎は、リーダーの気質を遺憾なく発揮した。
「彼自身すごく動揺していた。声を掛けなきゃと、体がパッと動いた。こっちはこっちで戦うからという話をした。チームに申し訳ないという気持ちもあると思うが、そういうところはあまり思わないでほしい。何試合出場停止になるかわからないが、このメンバーの一員という気持ちは最後まで忘れないでほしいと言った」
「特に何も考えてはいなかった」という大畑も、沸き上がった気持ちを素早い行動で表現していた。
それでも日本が混乱しなかった理由
この間、ピッチでは交代選手が入るまでの間、誰がどのポジションに入って急場をしのぐのかを素早く整理し、選手間で共有した。西尾がいた右センターバックの位置には長身187センチの右サイドバック、関根大輝が入った。右サイドバックには、左サイドバックで先発していたユーティリティーの内野貴史が移動。内野が抜けた左サイドバックの位置には体の強い松木が入り、4-4-1の布陣を敷いて、約5分間、中国の攻撃を跳ね返した。
前半22分には山本理仁を下げてDF木村誠二を投入。これにて最終ラインは右から関根、木村、高井幸大、内野貴史となり、勝ち点3を死守する態勢を整えた。
前半のうちに10人になるという大ピンチで、ピッチが混乱することなく試合を進めることができたのは、周到な準備があったからだ。チームはさまざまな状況を想定する中で、退場者が出るなど10人になった場合にはセットプレーでどこに誰が入るかまで細かく決めていた。
この試合で再三の好セーブを見せたGK小久保玲央ブライアンは、「こういう想定もGKコーチのハマ(浜野征哉)さんを中心にやっていた。海外のチームではそういう想定の練習はしない。自分も“10人(の想定を)やる必要ある?”と思っていたが、細やかさや対応力は日本のスタッフの素晴らしさだと思う」と準備力に胸を張る。