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中国戦で一発退場、西尾隆矢に駆け寄った“3人の選手”「みんなが温かく迎えてくれて…」TV中継には映らなかった“ロッカールームの真実”
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2024/04/19 17:01
中国戦で一発レッドカードの判定を受け、顔を覆いながら退場する西尾隆矢
準備の面では、ジャッジについて留意点をレクチャーされる時間も大会前に設けられていた。キャプテンの藤田は、「大会説明の時に日本人の審判の方が来て、いろいろな説明をしてもらった。今回は若い審判が多いから、そういったところで爪痕を残そうとしているかもしれないねという話が出ていた」と振り返った。
中国戦で何度も相手のきわどいチャージを受けていた松木も「ひじのところや足首のところもルール講習を受けていた」と明かす。また、大畑によると、参考映像として使われていたのは浦和などのACLの試合。「足の上げ方や手の出し方、そこは厳しく言われたし、しっかりとポイントポイントで教えてくれた」という。
西尾自身、中国戦の前日に「誰もが言っているように、アジアは簡単じゃないと、みなが自覚している」と語っている。それでもこのようなことが起きてしまう。それがサッカーなのだ。
試合後のロッカールームで西尾がチームメイトに語ったこと
ハーフタイムには守備の修正を確認しつつ、選手たちはそれぞれに西尾を思いやっていた。小久保は「ハーフタイムに彼(西尾)は別室にいてロッカーに来られなかったけど、彼のために戦うという気持ちはみんなの頭の中にあったと思う」と証言した。
ピッチを去った西尾は、試合終了までスタジアム内の別室で担当スタッフとともに過ごし、室内のモニターで日本の勝利を見届けた。試合終了後はロッカールームへ。全員の前に立ち、「本当にやってはいけない行動をしてしまった」と謝罪。「また一からサポートに回る。このチームの勝利のために少しでも力になれれば、できることがあれば」と話したという。
小久保は「試合後は彼が一人喋って、みんな、そこは気にせず、大丈夫だよと盛り上がった。サッカーではありえること。23人で戦うというのは監督も含めてみんなで言っている。自分たちは彼のために次の試合を戦って勝っていきたい」と、持ち前の明るさでチームの様子を描写した。
西尾の退場で戦術的交代を余儀なくされ、22分で退いた山本は、その瞬間は「ああ、オレかーー」と思ったと吐露したが、試合後は「まず考えたのは隆矢のメンタル」だったという。
「隆矢は試合後、真っ先に僕に謝ってきた。“仕方ない”と彼には伝えたし、チームとしては引きずっていない。たまたま隆矢だっただけで他の選手にもあり得ること。次に隆矢が闘える舞台を用意するために、僕らは勝ち続けなきゃいけない。隆矢が戻ってきた時に彼がチームを助けてくれると思っているので、みんな雰囲気よく迎えていた」