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トルシエ「久保建英、三笘薫、堂安律らに匹敵する才能はいない」“10人で中国に辛勝”U-23パリ世代に辛口だが…「その点でしっかり戦った」
posted2024/04/18 17:01
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
NurPhoto/Getty Images
フィリップ・トルシエに連絡を取ったのは、U-23日本対U-23中国戦の試合当日の朝だった。3月のW杯2次予選でインドネシアに敗れ、ベトナム代表監督(U-23代表監督も兼任)を解任されたトルシエは、ハノイを離れモロッコの首都ラバトにある自宅に戻っていた。
本来であればカタールのU-23アジアカップで再会し、日本とアジアの分析を聞けるのを楽しみにしていたが、来ないのであれば仕方がないと半ば諦めていた。ところがメールを送ると、試合を見られるようならば見るという返事が返ってきた。そして試合後に電話をすると、受話器の向こうから聞こえたのはいつもと変わらない快活なトルシエの声だった。
本コラムでは、U-23アジアカップの日本戦に関して、トルシエのインタビューを連載する予定である。ベトナム代表監督の任を解かれたとはいえ、日本とアジアのサッカーを良く知るトルシエは、パリ五輪出場権を懸けた若き日本代表の戦いを語る最適任者のひとりであるといえる。
第1回はU-23中国戦である。DF西尾隆矢がVARによるレッドカードで退場処分を受け、前半の早い時間帯から10人対11人の戦いとなった試合を、トルシエはどう見たのか。
10人になってからの日本はヨーロッパ流の…
――試合は見ましたか?
トルシエ:ああ、全部ではないが見た。10人になってからの日本は、ヨーロッパ流の計算ずくの戦い方をした。数的不利の状況で70分以上戦わねばならなかったのだから、ある意味当然ともいえた。パニックに陥ることなく、規律を保ちながら組織だった守備を実践した。大岩(剛監督)の守備的な戦略は成功したといえる。中国は得点機会を作り出したが、日本のゴールを割るまでには至らなかった。守備ブロックのバランスを崩せなかった。
――その通りですが……。
トルシエ:私が見る限り、このU-23代表は才能に溢れたチームではない。高い規律を保ったどちらかと言えばヨーロッパ的なチームだ。低い位置に強固なブロックを形成し、決してリスクは冒さない守備的なスタイルで10人になってからの時間を守り切った。
しかしそのやり方は、破綻していてもおかしくはなかった。というのも日本ならば、たとえ10人になってもボールを保持し続けることができたからだ。攻撃的なスタイルを取れたにもかかわらずそれをしなかったのは、対価を支払うことになってもおかしくはなかった。ボールの保持という点では、日本はまったく不十分だった。