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深夜、モスクワからの国際電話。
カズさんが話したかったこと。
posted2018/01/04 07:00
text by
瀬尾泰信(Number編集部)Yasunobu Seo
photograph by
Kazuyoshi Miura
午前1時55分。枕元のスマートフォンが振動した。
寝ぼけ眼を細めながら眩しく光る画面を見つめ、なんとか「非通知」の文字を読み取る。
この時間の「非通知」は、とらなくてもいいのでは──?
悪魔のささやきが一瞬聞こえたが、条件反射で指が着信ボタンをタップしていた。
「──です」
ガサガサ、ガサガサ。どうにも聞き取りにくい。
「……ネです、セキネです」
セキネさん。
レジェンド・カズ、三浦知良選手のマネージャー、セキネさんだった。
「いま、モスクワなんだけど……」
モスクワ……?
深夜の電話ということは……よっぽどのことが?
あ。そうだった。
カズさんはFIFAからレジェンドとして招待を受け、12月1日にモスクワで開かれた2018年ロシアW杯の組み合わせ抽選会に出席していたはずだ。昨晩遅くにテレビ中継も行われていた。日本はH組。対戦相手は、ポーランドと、コロンビアと、セネガル。少しずつ頭が動いてきた。
と同時に、疑問が湧いてきた。
セキネさんは、カズさんがブラジルでプレーしていた頃からずっとマネージャーを務めている。イタリア、クロアチア、オーストラリア……一緒に世界中を巡ってきているから、時差のことを考えずに電話をするわけがない。よっぽどのことがない限り、こんな時間にかけてこないはずだ。よっぽどのことがないかぎり……。
よっぽどのことって。
そんな! でも、もしかして……。