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「金閣寺の坂を走った成果がでました」ボストン・マラソンで大迫傑に先着して入賞…異色の経歴“京都の市民ランナー”森井勇磨とは何者か?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/19 11:05
ボストン・マラソンで自己ベストを4分以上更新して8位に入った森井勇磨。京都の市民ランナーという背景も注目を集めた
自分にはできない、アフリカ選手よりも自己ベストが遅いから……と相手のペースで走るのではなく、自信を持って臨んだ結果のスタートからの飛び出しだったのだ。
30kmから「ますます元気が出た」
森井は「自分のレースを心がけた」と話すように自分のペースを守った。13km前後で第2集団にいた大迫に追いつかれると、そこから30km前後まで並走する。
「大会記録を狙っていた」と5km以降独走したレマはハーフ地点を60分19秒で、森井と大迫は16位前後の64分05秒で通過する。
ボストンは25kmすぎから34kmまでアップダウンが続く厳しいコースで、そこでペースダウンする選手も多い。
「上りはあまり苦にならなかったし、大迫選手よりも僕の方がいい感じで走れていた」と疲労が出る後半も軽快だった。
言葉通り、30km以降に大迫を振り切り、さらに前を追いかけた。
「前の選手との差も詰まってきて、『これはチャンスがある』と思って、むしろどんどん元気が出ました」と笑顔で飄々と振り返る。
落ちてくる選手を次々と躱し、35kmでは12位、40kmでは10位まで順位を上げたが、圧巻だったのは最後の2.195kmだ。
ほとんどの選手がペースを大きく落とす中、森井はトップ10入りした選手中2番目となる6分47秒で、さらに順位も2つ上げて8位でフィニッシュラインを駆け抜けた。
まさに「100点満点」のレースだった。
初の海外マラソンで8位入賞、そして市民ランナーというユニークな経歴により、今後、海外マラソン出場への扉が開くだろう。
「ペースメーカーがいてパターン化されるレースよりは、ボストンやニューヨークのような勝負する、サバイバルレースを走ってみたいです」
夢は広がるばかりだ。
京都から世界へ。
「市民ランナー」森井の次の挑戦にもぜひ注目してほしい。