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「金閣寺の坂を走った成果がでました」ボストン・マラソンで大迫傑に先着して入賞…異色の経歴“京都の市民ランナー”森井勇磨とは何者か?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/19 11:05
ボストン・マラソンで自己ベストを4分以上更新して8位に入った森井勇磨。京都の市民ランナーという背景も注目を集めた
出場が決まるとすぐにボストンのコースを確認し、アップダウンに対応できる練習を行った。
「金閣寺のそばにある坂を走った成果が出ました」
京都の風光明媚な観光名所とマラソン練習というのは、京都市外の人にはなかなか結びつかないが、森井は金閣寺のそばにある「原谷(はらだに)」について力説する。
調べると金閣寺から桜の名所として知られる原谷苑手前まで高低差が90mほどの2kmの上り坂があるほか、周囲はアップダウンの激しい厳しいコースが多い。
「ジョグやポイント練習やスピードの変化をつけながら走るファルトレクなどを原谷の傾斜のきつい上り坂で行ったのですが、特に今日のレース終盤に効果があったように思います。2週間前のポイント練習でそこで自己ベストが出せたので、絶対にいけるという自信がありました。原谷でやったことが全部出せたと思います」
金閣寺も原谷もこんな形でお礼をされるとは思っていなかったのではないだろうか。
とにかく必要な練習を自分で考え、実行する力も森井の強さだろう。
「川内さんができるなら僕もできる」
またレース展開などをシミュレーションした際には、2018年のボストン・マラソンで優勝した川内優輝から大いに刺激を受けたという。
2018年の同大会は大寒波に見舞われ、スタート時の気温が5度を下回る寒さと土砂降りという悪天候だった。
スローペースを嫌う川内はスタートから飛び出し、その後ケニア選手と接戦を繰り広げ、40kmからのロングスパートでレースを制した。
「川内さんはめちゃくちゃなコンディションの中で自分のレースをして優勝した。『自分のレース』をすることが目標に繋がると思ったし、川内さんができるなら僕もできると思いました」