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「金閣寺の坂を走った成果がでました」ボストン・マラソンで大迫傑に先着して入賞…異色の経歴“京都の市民ランナー”森井勇磨とは何者か?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/19 11:05
ボストン・マラソンで自己ベストを4分以上更新して8位に入った森井勇磨。京都の市民ランナーという背景も注目を集めた
優勝したシサイ・レマ(エチオピア)が後続集団を引っ張り、森井を追いかけ4km前後で集団に吸収された。しかしその後も森井はリラックスした様子でレースを進める。
エントリーの段階で森井の自己ベストは出場選手中29番目で、最も速い記録を持つ2時間1分48秒のレマとは13分もの差があった。それでも、怯む様子は微塵もなかった。世界のトップと肩を並べて走ることを、心から楽しんでいるようにさえ見えた。
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森井はユニークな経歴の持ち主だ。
京都市出身の33歳で、府立山城高から山梨学院大に進学し、箱根駅伝にも1度出場している。
その後は実業団2チームで走ったのち、現在は京都陸協に所属し、西京極陸上競技場の運営会社でフルタイムで働きながら練習する市民ランナーだ。
当然、大学や実業団の時のように朝と夕方の二部練習は難しい。一流ランナーであれば1000kmを超えることも珍しくない月間走行距離も、760kmに留まっている。
「1回ずつ質の高い練習をすれば、走行距離を補うことができます。仕事内容も陸上関連の勤務なので、選手の気持ちなども以前より把握できるようになりました。どう発信し、対応したらいいか『考える力』がついたことも結果的に競技力に結びついています」
市民ランナーという立場を前向きに捉えているが、苦労はある。
「日程の理由でボストン到着がレース2日前の夕方でした。あと1日、2日早くボストン入りしていたら、動きがどう変わったのだろうとは思います。でもコンディショニングの不安よりも気持ちが勝っていたので、今出せるパフォーマンスができたのは良かったです」
2月18日の京都マラソンで優勝し、京都市と姉妹都市であるボストン開催の今大会への派遣が決まったため、練習期間は1カ月半と短かかった。それでも8位入賞、サブ10達成には確固とした要因がある。