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「契約金は0円です」オリックスの18歳“契約金ゼロ選手”はその後どうなった?「高校生で0円って僕しかいなかった」
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/29 11:03
2000年ドラフト8位で指名され、オリックスに入団した高橋浩司。プロ生活を振り返る
「4年間で、戦力外になる可能性があった中で、僕には関係ないかなという思いもありました。他人事じゃないですけど、合併とか、どれくらい重要なことかっていうのが把握できていないという部分もありました」
合併すれば、単純に選手は半分になる。ならば、自分はクビになるかもしれない。
その恐れの方が先に立つ。
9月18、19の両日、ストライキ2試合。その分、給料が引かれた。それは、経営者と労働者の闘いにおいて、まさに自らも血を流して、要求を貫徹するためである。
高橋も、同じ選手会の一員だ。前月から6万円減だった。何千万、何億円ともらっているプレーヤーではない。
「どうしようかと思いました。どうやって生きようかと。えげつなく引かれるんです。これ、大丈夫なのかな、と」
12球団維持。ファンの思い。ビジネスの観点。
そうした「大枠の物語」の陰で、先が見えない霧の中に包まれた、若き一人の野球選手がいたことを、忘れてはいけない。
うまくいけば、後々も獲っていますもんね
「育成は、育てるという感じじゃないですか。でもなんか、契約金0円選手って、全く違う感じですよね。高校生で0円って、僕しかいなかったですよね。ふと考えた時、高校生一人やったんやな、と。うまくいけば、後々も獲っていますもんね」
2021年、大阪・舞洲に練習拠点を移しての5年目。
オリックスは、2月のキャンプインの時点で、背番号3桁の育成選手が20人を数えていた。育成試合を組み、結果を出せば二軍に抜擢され、支配下に上がる可能性もある。
そうした「システム」がある今と、高橋の時代との違いは顕著だ。
それでも「契約金0円」の中で、一瞬とはいえ、輝きを放ったプレーヤーがいた。
<つづく>