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山川穂高「大ブーイング凱旋」の裏側…西武の後輩選手は「感情移入しちゃう」「山川と再会のハグ」記者が見た“愛憎のベルーナドーム”
text by
中島大輔Daisuke Nakajima
photograph byNanae Suzuki
posted2024/04/13 17:07
試合前、西武の選手やコーチと談笑していた山川穂高。打席ではブーイングを浴びせられたが、実際の現地での雰囲気は…
ビジターのソフトバンクの打順が「1番センター周東佑京、2番ショート今宮健太、3番ライト柳田悠岐」と発表されると、次のアナウンスをかき消すようにレフトスタンドから低音のブーイングが鳴り響いた。かつて浅村栄斗(楽天)や森友哉(オリックス)がFA移籍した際も西武ファンは凱旋をブーイングで迎えたが、それらとは異質な感情が込められているように聞こえる。「4番指名打者・山川穂高」のアナウンスは、バックネット裏の場外記者席ではほぼ聞き取れなかった。
注目の初打席が回ってきたのは初回二死二塁。3番・柳田が空振り三振に倒れるや、打席に向かう山川にレフトスタンドのライオンズファンは耳をつんざくようなブーイングを発した。西武の先発・今井達也が外角低めのストレート、真ん中低めのスライダーでストライクを取るたび、レフトスタンドから大歓声が湧き上がる。
ワイルドピッチをはさみ、2ボール、2ストライクからの5球目。今井が外角低めにスライダーを投じると、山川は空振り三振に倒れた。
「いいぞ、いいぞ、今井!」
刹那、レフトスタンドのライオンズファンは大合唱で頼れる右腕投手を讃える。
「いいぞ、いいぞ、今井!」
まるでリーグ優勝が決まったか、あるいは甲子園球場で阪神ファンを見ているかのような熱狂だ。
0対0で4回に回ってきた第2打席は「帰れ、帰れ」コールもライオンズファンから起こるなか、今井が外角に曲がりながら落ちるスライダーでストライクカウントを重ねていく。
「打ってみろ」くらいの気持ち
「イエーイ!」「よっしゃー!」
ライオンズファンが快哉をさけぶ。1ボール、2ストライクからの4球目。今井が外角低めのスライダーで2打席連続三振に仕留めると、ホームチームのファンは何度も拳を天に突き上げた。