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山川穂高「大ブーイング凱旋」の裏側…西武の後輩選手は「感情移入しちゃう」「山川と再会のハグ」記者が見た“愛憎のベルーナドーム”
posted2024/04/13 17:07
text by
中島大輔Daisuke Nakajima
photograph by
Nanae Suzuki
ベルーナドームに西武ファンの憎悪が込められたブーイングが鳴り響く数時間前、試合開始前のグラウンド上には“いつも”の光景が広がっていた。
4月12日、西武対ソフトバンク。ペナントレース序盤の1試合は、山川穂高の“凱旋”として多くの注目を集めた。女性スキャンダルの末にフリーエージェント(FA)権を行使して移籍した元主砲の帰還に、ライオンズファンはどんな反応を示すのか。試合前、メディアや球団関係者、グラウンドキーパーが話し合う声が至るところから聞こえてきた。
金子と談笑、水上とハグ
対して、グラウンド上の選手たちは普段通りだった。
15時頃、古巣・西武の打撃練習中に山川はソフトバンク側ベンチから真っ先に出てくると、まずは松井稼頭央監督のもとへ挨拶に出向いた。平石洋介ヘッド兼打撃戦略コーチとグータッチを交わし、自ら歩み寄ってきた金子侑司と談笑、水上由伸とはハグを交わす場面もあった。まさに旧交を温めるという様子だった。
唯一去年までと違うのは、山川が「Sh」マークの入った黒のパーカーを着ていることだった。
大学の後輩でもある西武・外崎は…
「実感が湧きましたね。ソフトバンク、行ったんだって。やっぱり、大学から一緒にやっているんで」
そう振り返ったのは、富士大学時代から1個下の後輩としてともにプレーしてきた外崎修汰だ。彼にとって、山川はプロ入りへの指針となる先輩だった。
一方、ソフトバンクの関係者は内情をこう話している。
「チーム内では至って普通だよ。すぐに溶け込んだ。選手たちの間にはなんのわだかまりもない。でも、よく練習するよね、山川と近藤(健介)は」
西武時代から変わらない山川の野球への探究心は、新天地でも周囲に好影響を及ぼしている様子だ。
「さあ、行こう!」
山川は自身の打撃練習を終えて一度ベンチに引き上げた後、再びグラウンドに姿を現すと一塁ノックを受け始めた。ベルーナドームで公式戦に臨むのは337日ぶりだ。その表情と声は、再びこの場所で野球ができるという喜びにあふれ出ていた。
「それはもちろんです。一日一日を大事にしっかりやっていくっていうのは、より思っていますので」
山川穂高のアナウンスがほぼ聞こえない
だが、普段どおりの光景はプレーボール直前、スタメン発表が行われると一変した。