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野球とカネの実情「なぜプロ野球は木製、高校は金属バットなの?」甲子園出場校・ショップ店員が明かす「1試合で2本折れると…3万円飛ぶ」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/04/11 17:02
プロは木製バット、高校野球は金属バット…その理由は?(写真はイメージ/巨人・坂本勇人)
金属バット元年、銚子商業の篠塚利夫(元巨人)が木製バットを使用し2本塁打したことは今も語り草になっている。ただし、当時は金属と木製の性能にほとんど差はなかった。むしろ慣れ親しんでいた木製の方が使いやすいと感じていた選手は篠塚だけではあるまい。したがって吉川や対馬が木製バットを使った背景と比較するのは無理がある。
バットが2本折れた=「3万円が飛んでしまう」
野球用品専門店「ベースマン立川店」の店長、星徹弥さんは今回の基準変更で高校球界に木製バットブームがくるのではという見方には否定的だ。
「おそらく青森山田の2人が使っているのは2万円ぐらいのバットだと思います。多少、値引きしてもらったんでしょうね。本当にいい木製バットだと2万5000円ぐらいしますが、2万円クラスのバットであれば、かなり良質のバットだと言っていい。ただ、最高級品のバットでも折れないわけではありません。吉川君は2回戦の広陵戦で2本、バットを折られてしまいました。それで3万が飛んでしまうわけです。新基準の金属バットが1本、買えてしまうくらいの値段です。もっと安い木製バットもありますが、安いものほど木目がスカスカなんですよ。高校生の技術だと、ばんばん折れると思います。そうなると折れたバットが投手に直撃したりして逆に危ない。木製バットは梅雨時期などの管理も大変ですしね。湿気を含んで重くなりますから。青森山田の2人の試みはナイストライだと思いますけど、今後、同じような選手がどんどん出てくるかというと、それは難しいでしょうね」
選抜出場校の多くが一時は木製バットの使用を検討したようだ。その雰囲気からして、もっとたくさん木製バットを使用する選手が現れるのかと少し楽しみにしていた。しかし、蓋を開けてみたら、木製バットを使用したのは青森山田の2選手にとどまった。その人数が現段階における高校球界の1つの結論なのだ。