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オリンピックへの道BACK NUMBER
「メンタルを壊してまでパリを目指そうとは思えなかった」…女子卓球“黄金世代”加藤美優(24歳)が明かすコロナ禍の「葛藤」と「休養の決断」の裏側
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2024/04/06 11:01
“史上最強世代”との呼び声高い日本の女子卓球界で戦ってきた加藤美優。パリ五輪を目前に控え、休養を選択した理由は何だったのか
一方で、環境面などさまざまな理由もあり、容易に練習を再開できない、再開できても制限の度合いが強い選手やチームもあった。加藤は後者だった。
「ほぼ家から出られず、練習をするようになってからも、『ちょっと怖いな。感染したらどうしよう』とばかり思っていました。試合もなくなりましたし、基本、家から出ない生活がすごく長く続きました」
「卓球よりもやっぱり家族が大事」
そんな状況下だったこともあり、厳しい選考レースを戦ってきた東京五輪にもそこまで気が向かなかったという。
「もちろんテレビでは見ていましたけど、それどころじゃなかったかもしれないです。まず、コロナが母にうつったら本当にヤバい。その想いが大きすぎたので。卓球よりもやっぱり家族が大事ですから」
コロナ後の環境は、国内外で遠征を繰り返していたそれ以前とは一変していた。
「それがすごくきつかったですね。試合で死ぬほど忙しくしているときよりも。長い自粛生活でメンタルが……。忙しい方が、よけいなことを考えなくていいじゃないですか。
家族を守らなきゃいけない気持ちが常にあって、今までめっちゃ忙しくしてきたのに、急に『全部ないですよ』となると、今までの疲労がポンと来るというか。急に考える時間ができて、逆に苦しくなってしまいました」
そんな想いが、前述した世界選手権の代表選考合宿の棄権にも繋がっていたのだった。
ただ、それでも加藤は徐々に気持ちを立て直していった。
「2021年は9月にTリーグの開幕戦があって、何とかそこには合わせたいという気持ちがありました。それと、中国での大会の代表には選ばれたので、そこはなんとかして出たいという気持ちもあって。その2つの目標のおかげで、どうにかまた頑張れるようになれたと思います」