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オリンピックへの道BACK NUMBER
「メンタルを壊してまでパリを目指そうとは思えなかった」…女子卓球“黄金世代”加藤美優(24歳)が明かすコロナ禍の「葛藤」と「休養の決断」の裏側
posted2024/04/06 11:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
今年2月に行われた卓球の世界選手権。絶対王者・中国をギリギリまで追い詰め、日本でも大きな話題となった女子団体チーム。早田ひな、平野美宇らの主力選手は、いずれも2000年前後生まれの「卓球最強世代」の選手たちだ。
実は世界選手権から遡ること1カ月――そんな黄金世代の選手のひとりである加藤美優は、日本選手権への出場辞退と長期休養という異例の決断を下していた。これまで世界の舞台で活躍してきた名選手に、一体何が起きていたのか。本人にその裏側を聞いた。《NumberWebインタビュー全2回の2回目/前編から読む》
2021年の夏、東京五輪が開催された。日本卓球界は、水谷隼と伊藤美誠の混合ダブルスで金メダルを獲得するなど、史上最高の好成績を残して終えた。
大会が閉幕した8月には、早くも2021年11月に予定されていた世界選手権(ヒューストン)の日本代表選考合宿が実施された。
だが、東京五輪の代表まであとわずかというところまで来ていた実力者の加藤美優は、この合宿を棄権していた。おのずと世界選手権代表への道は閉ざされることになる。
「なんていうんですかね。メンタルがちょっと……というのか」
加藤はこう振り返る。
実は当時、加藤は卓球に全力で向き合えない状況が続いていた。
コロナ禍で一変した卓球生活
その要因は新型コロナウイルスの蔓延だった。2020年1月、国内で初の感染者が出て以降、4月には緊急事態宣言が発令された。卓球を含め各競技の選手たちも活動休止をよぎなくされたが、加藤はとりわけコロナ禍を気にかけていた。一緒に暮らす家族のことがあったからだ。
「もともと私の母に持病があって……もしコロナに罹患したら、本当に亡くなってしまうようなリスクがありました」
やがて各々の置かれた状況の中、コロナを警戒しつつも環境を整え、練習を再開する選手やチームも出てきた。