フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
“禁止技”バックフリップは解禁されるのか? 話題のシャオ・イム・ファが「後悔はしなかった」と語った理由…会場で聞いた「専門家たちの意見」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/02 17:21
世界選手権フリーでバックフリップを披露し、大歓声を浴びたシャオ・イム・ファ
禁止技に対する専門家の意見は
シャオ・イム・ファは今季4つの公式試合でこの技を演じ、そのたびに2ポイント減点を受けたもののメダルを手にしてきた。
危険であることを理由に1976年からISUが禁じてきたこのバックフリップは、再び競技に戻ってくるのだろうか。
会場に来ていたソチ五輪銀メダリストのパトリック・チャン、ショーでは自らもバックフリップを演じていたリレハンメルと長野五輪銅メダリスト、フィリップ・キャンデロロの二人とも、「エレメントとしてポイントを与えるのでなければ、許可しても良いと思う」と答えた。
コレオシークエンスでは、それぞれの選手が得意な動きを入れる。ジェイソン・ブラウンのスパイラルやスプリットジャンプ、宇野のクリムキン・イーグル、マリニンが「ラズベリーツイスト」と名づけたオリジナルのジャンプなど、いずれもその技自体がポイントを持っているわけではない。だが観客を喜ばせ、演技に個性を与え、GOEやコンポーネンツでの評価につながる。バックフリップもその一つの選択肢にしても良いのではないか、という意見だ。
解禁の是非は6月のISU総会で決定?
だがその一方で、スケート関係者からは「もっと減点を課すべき。2ポイントは甘すぎる」という意見もある。技そのものが危険なだけでなく、練習時に他の選手に与える影響や、演じた後に氷にダメージを与える、という懸念も聞かれる。
モントリオールで男子の技術コントローラーを務めたISU技術委員、岡部由紀子氏によると、シーズン中に何度かこの技について委員会で話し合いがもたれたという。
実際の危険性についての検討や、アクロバット的な技に注目が集まってしまう懸念もある中で、観衆の目を引く一つの要素であることも事実であり、現在ISUは検討中であるという。
今年6月にラスベガスで開催されるISU総会で、この技を解禁させるかどうかの審議がなされることはほぼ間違いない。現在はフランスのシャオ・イム・ファしか演じていないが、他の国の連盟はどう出るのか。この禁止技、はたして競技で普通に見る日がやってくるのだろうか。