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甲子園の風BACK NUMBER
「清原和博よりも桑田真澄の方が嫌だった」最強のPL学園に“秋田の雑草軍団”はどう立ち向かったのか? “40年前の金農旋風”のウラ側
text by
安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph byAFLO
posted2024/03/31 06:01
高校野球界の大スターだった桑田真澄と清原和博。40年前、金足農は「KKコンビ」を擁するPL学園をあと一歩のところまで追い詰めた
あの大魔神・佐々木主浩からホームラン
すると、秋田県2位で出場した春季東北大会で、金足農は圧巻の戦いを披露する。
1回戦は水沢が羽黒工(現・羽黒/山形)を完封し、4-0で勝利。準々決勝は水沢がリリーフに回り、東北(宮城)に16-5で7回コールド勝ちした。
主将の長谷川はこの試合で満塁と3ランの2本塁打を放った。2本目を打った相手投手は佐々木主浩。のちにプロ野球を代表するストッパーとして大活躍し、横浜ベイスターズを日本一に導いた「大魔神」である。
準決勝は盛岡工(岩手)を11-6、決勝は白石工(宮城)に6-0で快勝し、金足農は春の東北王者になった。
この決勝では水沢と長谷川が本塁打を打っている。チームは東北大会4試合で、計7本塁打。うち3本を長谷川、水沢も2本を打った。どこかエース頼りだったチームは、バランスのとれた好チームに育って夏を迎えた。
「けっこう強かったんですよ」
主将の長谷川が振り返る。
「夏の甲子園で勝ち上がるたびに騒がれたけど、攻撃力もあったし、守備には自信があった。信じられないような本数のノックを受けてきましたからね」
ただ、すんなり勝ち上がっていったわけではない。秋田大会決勝は、能代に2点のリードを許したまま9回を迎えた。
金足農にとって、2年連続6度目の決勝進出。過去はいずれも敗れている。当時の朝日新聞スポーツ面をみると、「あと1勝に弱いチーム」と言われ、関係者は「またか」と思ったと球場の雰囲気を詳報している。
だが、この年は違った。
9回1死から3連打で満塁とし、相手の内野ゴロ悪送球によって、土壇場で追いついた。突破口を開いた8番の佐藤俊樹は、春の甲子園ではベンチに入れず、スタンドで応援していた3年生。チーム内の競争により、地力が上がっていた。
「6月の東北大会で勝ったのが自信になりました」
嶋崎は優勝インタビューでそう語り、6度目の挑戦でついに悲願を達成した喜びに浸った。