環境が人を変化させ、成長させる。かつて本田圭佑が「環境先行型」と謡ったが、近い思考として「環境のせいにしない」。それが10代からの遠藤の成長の秘訣だ。

「俺は監督のやりたいことを、いつも『出来る』と思うようにしているんです。俺が見てきた外国人選手の使われない選手の不満って、それは出来ないって決めつけた時に生まれている。結局、そういう選手は、そこじゃなくてもどこかで躓くんですよ。

　たとえば、リバプールのアンカーに求められることは、今までの概念だと『無理』なんです。運動量は尋常じゃないし、スピードもいる、スペースが広すぎる。一見、無理だと思うことをクロップは求める……でも、その監督の思考になって、チャレンジするかどうかでしょ。合わないと思って、言い訳をしていたら選手として終わり。それに、出来ると思って獲ってもらっているわけですから。

　だから、自分は若い選手に聞かれたら『常に移籍した方が良い』って言っています。合わないことがあるかもしれないけど、合わせようともがく。それだけでもステップアップなんです。周りは批判するかもだけど、気にしなければいい。俺はそう、思っています」

批判サポーターを見返す「月間MVP」

　翌日、3日間にわたって泊まらせてもらった遠藤宅を離れた。その週末に行われたフルハム戦で遠藤はプレミアリーグ初ゴールを決めた。

　2－3のビハインドで迎えた87分、つい5分前にピッチに投入された遠藤は、サラーが落としたボールをゴールネットに突き刺した。同点弾のミドルシュートに呼応するかのようにその1分後、アーノルドが逆転ゴールを叩き込む。

　揺れるスタジアムと、カメラワーク。マンオブザマッチに輝いたアーノルドが「真のプロフェッショナルだ」と真っ先に名前を挙げる。マージーサイドに伝わる伝統「アンフィールド劇場」を引き起こしたのは、間違いなく新加入の日本人だった。

　最高のスタートで走り出した12月、遠藤は過密スケジュールの中で行われた8試合全てに出場し、プレー時間および走行距離は共にクラブ最多を記録した。チームも一気に勝ち点を積み上げてプレミアリーグで首位に躍り出た。

プレミアリーグ初得点を決めたフルハム戦。短い出場時間ながら勝利に貢献し、大きな信頼を勝ち取った　©︎Getty Images

　加入当初は厳しい声を浴びせていたはずのサポーターたちは、月間MVPに遠藤を選出した。

「この1カ月は、人生を懸けてやっていましたからね」

　超過密日程を“最高の形”で乗り切った遠藤からは珍しく熱っぽいメッセージが届いた。

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