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「シーズンオフは生活費を稼がないといけない」ハズだけど…「夢のためにアルバイトは辞めました」NPB二軍に“新規参入”新潟BCに見るリアル
posted2024/02/20 06:01
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Shunsaku Sakai
2月1日に「常識外れ」のキャンプインを見てきた。
向かった先は新潟である。東京を発った新幹線が長いトンネルを抜けて越後湯沢駅に滑り込むと、雪国であった。
長岡駅ではスプリンクラーが線路の雪を溶かしている。本当にここで野球をやるのか……。車窓に映る銀世界を見て、そんな思いがよぎる。今季からNPBのイースタン・リーグに参加するオイシックス新潟アルビレックスBCは、地元の新潟でキャンプ初日を迎えた。
プロ野球史上“最北端”のキャンプイン
「球春到来」といえば、近年は温暖な南国で始まるものと相場が決まっていて、豪雪地帯での始動なんて聞いたことがない。NPBの記録部によれば、1950年以前は調査中だが、それでも、プロ野球史上“最北端”のキャンプだという見立てである。
拠点である新潟市のハードオフエコスタジアム新潟は積雪こそなかったが、小雪が舞い、6度近くあった気温は、夕方には1度台まで下がった。狭い一、三塁側の室内練習場での練習にとどまり、のびのびと動ける環境ではない。
それでも、選手は3月16日のイースタン開幕ヤクルト戦(戸田)に向けて、準備を進めなければならない。
「寒さよりも、体を早く仕上げないといけないことの方が厳しいですね。これまでは1カ月、(始動が)遅かったので、じょじょに、という感覚でしたが、NPBのリーグに入るので、レベルも上がって、今まで以上にしっかりやらないといけません」
寒気を吹き飛ばすような熱を発するのは主将の藤原大智である。
昨年11月22日がチームの転機になった。07年から独立リーグのルートインBCリーグに所属するが、この日、24年からのNPBの二軍参戦が決まった。朗報を聞いた藤原は武者震いした。
「どうなるんだろうという不安もありましたが、めっちゃチャンスやんって。実際に自分の中では腹をくくれました」
藤原は独立リーグ3年目で、チームの主力である。立正大淞南(島根)から創価大を経て新潟でプレー。168cmと小柄だが、両打ちで俊足巧打が光る。1年目の22年は64試合出場で90安打の打率.337をマークし、29盗塁した。昨季も打率.339、15盗塁と結果を残し、「自分の目標はNPBに置いています」と言い切る。