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「シーズンオフは生活費を稼がないといけない」ハズだけど…「夢のためにアルバイトは辞めました」NPB二軍に“新規参入”新潟BCに見るリアル
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byShunsaku Sakai
posted2024/02/20 06:01
今季からNPBの二軍に参入したオイシックス新潟アルビレックスは2月1日に本拠地のハードオフエコスタジアム新潟で始動。午後には小雪が舞った
今季からオイシックス新潟と「くふうハヤテベンチャーズ静岡」がファームに参戦し、大きく2つの意味で注目される。NPBを戦力外になり、補強期限である7月末までにNPB復帰を目指す選手の新たな受け皿であること。もう1つが、NPB入りを目指す独立リーガーにとって、千載一遇のチャンスが生まれたことである。
とりわけ、後者にとっては、ほぼ毎試合がNPBの“入団テスト”を受けるような形となり、環境はガラリと変わる。だが、一方で、独立リーガーとしての現実が横たわり、24歳の藤原もジレンマに陥った。
「シーズンオフは生活費を稼がないといけません。車の保険のほか、家賃などもアルバイト代で払わないといけないんです」
これまではシーズンオフのアルバイトで生計を立てていたが…?
BCリーグではシーズン中、平均15万円とされる月給が選手に支払われ、公式戦期間中はアルバイトをできない。だが、シーズンオフは月給が出ないため、選手はアルバイトで生計を立てているのが現状だ。
藤原も2年前は都内のホテルでデータ入力やベッドメイキング、清掃などに従事し、今オフは新潟のタイヤ工場で働いた。例年なら始動は3月になり、まだアルバイトをしている時期である。だが、NPB参加に伴って、キャンプインが1カ月以上も早まり、決断を迫られた。
生きるために妥協するか、夢のために退路を断つか――。
「1月は、1カ月は練習をして体を作らないと、2月1日からは無理だなと思ったので、アルバイトは昨年の12月で終えました」
自主トレに専念すれば、収入は途絶え、生活が厳しくなる。それでも、野球と向き合う覚悟を固めた。背に腹は代えられず、頼ったのは故郷の兵庫県に住む両親だった。「1月は準備したい」と頭を下げた。
両親は、息子が小学1年から野球に打ち込む姿を見てきた。新潟も何度か訪れ、プレーを見た。ファンに応援されている光景を目の当たりにして心が震えたのだという。藤原はそんな思いを打ち明けられ、こう言われた。
「そういう楽しみをまだ味わわせてくれるのは、親としてもありがたい。ずっと野球を続けてほしい。できるところまで応援するから」