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“ド派手な赤髪”で華麗なカムバック…女子バスケ吉田亜沙美(36歳)2度の引退決断から異例の復帰までの舞台裏「リュウさんがいて心強かった」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYoshio Kato/AFLO
posted2024/02/16 11:04
昨年、2度目の現役復帰を果たした吉田亜沙美(36歳)。4年ぶりの日本代表となったが、パリ五輪出場権の獲得に貢献した
リストが発表された直後は、主力の一員としてどこまでチームに貢献できるか懐疑的な声も少なくなかった。しかしそんな声を黙らせるかのように、コートでは短い時間でも流れを変え、視野の広さを生かしたテンポの良いパス回しでオフェンスにリズムを与えた。
百戦錬磨のベテランの復帰は、チームメイトたちにも安定感をもたらした。
ENEOSでも一緒にプレーした宮崎早織(28歳)が「私は1年目からリュウさん(吉田)と一緒にプレーしていますが、一緒に代表でできたことはすごくうれしかったですし、交代でリュウさんが出てきてくれてとても心強かったです」と頼れる存在の復帰を歓迎すれば、主将の林咲希(28歳)も「(馬瓜)エブリン選手と吉田選手が復帰してくれたことによって、チームの士気が一段と上がった印象がありますし、絶対に負けないという気持ちを持ってプレーできていたと思います」と続いた。
「経験を伝える義務が私にはある」
馬瓜エブリン(28歳)が東京五輪後に“人生の夏休み”を取得し、1年の休養を経て復帰したことは話題になった。他にも、社長としての一面を持つ高田真希(34歳)など、女子バスケ代表には多角的な視点で、自分らしい生き方を模索し、行動を起こす選手が増えている。
そこには、長く日本代表の主将を務め、司令塔として活躍してきた吉田の“常識にとらわれないキャリア形成”も少なからず影響を与えているだろう。
「これまでいろんな経験をさせてもらいました。その経験を伝える義務が私にはあると思っています。(代表も所属チームも)若く、可能性しかないチーム。私の経験が何か少しでも、“私も変わりたい”“変わらなきゃ”と思ってもらえるきっかけになってくれたら嬉しい。それが私の役割であり、使命だと思っています」(吉田)
五輪の切符は勝ち取った。しかし、そのチケットをもらえるのは、わずか12人だ。世界の厳しさを知る一騎当千のベテランは、リオ五輪以来となる自身2度目の大舞台を目指して、再びアクセルを踏む。
パリでは何色に染まった髪がコートで躍動するのか。その日が来ることを心待ちにしている。