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“ド派手な赤髪”で華麗なカムバック…女子バスケ吉田亜沙美(36歳)2度の引退決断から異例の復帰までの舞台裏「リュウさんがいて心強かった」
posted2024/02/16 11:04
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Yoshio Kato/AFLO
ド派手な赤髪のベリーショートが、コートの中でひときわ目を引いた。
ハンガリー・ショプロンで行われた女子バスケットボールのパリオリンピック世界最終予選。世界ランキング9位の日本代表は最終戦で同5位のカナダと対戦し、86-82と勝利。2016年リオ大会、銀メダルに輝いた2021年東京大会に続く3大会連続の五輪出場を決めた。
その中で存在感を発揮したのが、チーム最年長・36歳の吉田亜沙美だった。
吉田は今回の最終予選を前に、髪の毛を日本代表カラーの赤(ほぼピンク)に染め上げた。『スラムダンク』の桜木花道を彷彿とさせる出立ちで、ハンガリーでも縦横無尽に駆け回った。
注目されたのは、髪型だけではない。今回の最終予選は、吉田にとっては2020年2月に開催された東京五輪世界最終予選以来、4年ぶりの代表戦だった。
「1月に招集された20名と新しく出会って、仲間になって、みんなとバスケットボールができたことが本当に幸せでした。パリに行けるように私も頑張っていきたいと思います」
引退を決めたリオ五輪後の“燃え尽き”
華々しい舞台で活躍する吉田だが、実は2019年、2021年と過去に2度も現役を引退している。だが、2023年4月に三たび現役に復帰し、競技人生の“第3章”が始まった。
1度目の引退は、夢を実現したことで“次の目標”を見失ったことが引き金となった。
アテネ大会以来との出場となったリオ五輪ではベスト8に進出。最後のアメリカ戦ではすべての選手が無邪気に楽しんでいる姿があった。吉田はその幸せな時間を噛み締めていた。
当時所属していたのは常勝軍団のJX-ENEOSサンフラワーズ(現・ENEOSサンフラワーズ)。リーグ優勝を果たしても「嬉しいという感情が少し薄れていた」。そんな中で迎えたリオ五輪では、忘れかけていた“楽しい”や“嬉しい”という感情を再確認することができた。10年かけてつかみ取った夢舞台は、「一生忘れられない大会」となった。
だからこそ、すぐに東京五輪へと気持ちは向かなかった。