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“ド派手な赤髪”で華麗なカムバック…女子バスケ吉田亜沙美(36歳)2度の引退決断から異例の復帰までの舞台裏「リュウさんがいて心強かった」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYoshio Kato/AFLO
posted2024/02/16 11:04
昨年、2度目の現役復帰を果たした吉田亜沙美(36歳)。4年ぶりの日本代表となったが、パリ五輪出場権の獲得に貢献した
「このために戻ってきたのに……という思いがあったので、(延期が決まったときは)絶望でしたね。あと1年も先となると、モチベーション、コンディションを考慮すると厳しい。だから、現役を退くことを決めたんです」
現役復帰から1年4カ月後の2021年1月、33歳の時に2度目の現役引退を決断した。
2度もそんな大きな決断をした吉田が、異例とも言える3度目の復帰を決めたのは「今しかできないことがある。目の前にチャレンジできるチャンスがあるのに見過ごせない。二度と後悔したくない」という思いが再び、芽生えたから。
何より東京五輪で躍進する後輩たちの姿を見て、心のどこかに引っかかるものに気がついた。銀メダルを獲得したチームを見て、「シューターがたくさんいるので、パスの選択肢がたくさんある。だからパスを出したいなと感じましたし、一緒にプレーしたいなと思いましたね」と、後に当時の心境を振り返っていた。
「“あの時やっておけばよかったな”と思った瞬間があったんです。同じ後悔をするのなら、やらずに後悔よりやって後悔だなと。たぶん、今回が本当に最後のチャンス。それを簡単に手放せないなと思ったので」
未知の挑戦となる“3度目の現役生活”
2023年4月、アイシン ウィングスに加入した。秋のWリーグ開幕に合わせて「気合いを入れて青くしてみました」と、チームカラーの青に髪を染めた。その覚悟はプレーにも現れ、与えられた時間の中で持ち前のリズムを取り戻し、若手が多く揃ったチームに変化を与えた。
全盛期はここぞという場面で自らシュートを決め、力強いドライブで切り崩し、味方のシュートをお膳立てするなど絶対的なエースガードとして君臨したが、キャリアも年齢も重ねた今は冷静に自身を見つめている。
「数年前から体力的な部分での衰えや、自分が思い描いているバスケの動きができず歯がゆさを感じていました。それはこれからもうまく付き合っていかなければいけない部分。今の自分のベストパフォーマンスをその都度、出せるようにやっていきたい」
2度の現役引退と現役復帰は過去にも例をみない。3度目の現役生活は吉田自身にとっても未知のチャレンジだ。
「昔の自分のようにはいかないけれど、それをしっかりと受け止めて、そのとき出来るプレーを探しながら、新しい自分を作っていきたい」
年が明けた1月、吉報が届いた。4年ぶりに恩塚HCが率いる日本代表候補に復帰し、2月には最終予選を戦う12人に選ばれた。