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「高校で陸上はやめようと思っていた」マラソンランナー・前田彩里が振り返る「普通の学生生活を送りたかった」女子高生が陸上を続けた理由
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2024/02/18 17:00
小学校まではバスケ部。家族の影響で中学から陸上を始めたという前田彩里。ダイハツに入社するまでのキャリアを振り返ってもらった
大きな声では言えないのですが…(笑)
「佛教大を選んだのは、大きな声では言えないのですが、監督とお話をさせてもらった際、髪の毛を染めたり、ピアスをしたり、おしゃれをしてもいいということだったので。そこは、すごく重要でした(笑)。高校時代は厳しかったので、競技プラスアルファを求めていたんです」
佛教大は、当時、駅伝が強く、前田は1年目にして全日本大学女子駅伝に出走し、5区3位でチームの優勝に貢献した。みんなが喜ぶ中、前田はまったく満足がいかなかった。
ひとりだけ足を引っ張っているんじゃないか
「他の人たちは、みんな、ほぼ区間賞で私だけ区間3位だったんです。しかも佛教大の部活は、先輩後輩の厳しさがなくて、優しいいい人たちばっかりだったんです。だから、優勝メンバーになれたけど、ひとりだけ足を引っ張っているんじゃないか。本当に私が駅伝を走っていいのかなとすごく考えました。監督にも呼ばれて、『先輩たちはおしゃれもするし、遊びにもいくけど、やることもしっかりやっている。先輩たちのいいところを盗め』と言われたんです。私は、ただ遊んでいるだけだったので、ここで目が覚めたといいますか、自分の競技に対する姿勢が変わりました。自分にとっては、大きなターニングポイントになりました」
厳しかった高校時代の反動で好きなものを食べ、20歳前後で太りやすい時期と重なり、体重管理に悩んでいたという。しかし、間食をやめて、普段の食事は節制するように心がけると、徐々に体が絞れ、軽くなると走れるようになった。
ダイハツを選んだ理由
大学3年の後半になると、5000mで15分32秒22を出し、多くの実業団から声がかかるようになった。
「お話はいろいろいただきましたがダイハツは、関西で近かったですし、勝手に憧れていた先輩の木﨑(良子)さんが在籍されていたので、印象が良かったんです。おしゃれの制限とかはないですし、私はマラソンをやりたいというのがあったんですけど、競技について自由にやれる感じがしました。それで、ほぼ即決でしたね。当時の監督と話をした直感で、この人とならやれそうというのが最大の決め手でした」
前田は、自分の勘を信じて、名門・ダイハツ女子陸上競技部に入ることを決めた。
<つづく>