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超マイペースなニューヒロイン。
女子マラソン、前田彩里とは何者?

posted2015/03/09 11:35

 
超マイペースなニューヒロイン。女子マラソン、前田彩里とは何者?<Number Web> photograph by Kyodo News

2013年に他界した父の遺言は「五輪に行け」。昨年は3回しかできなかった腕立て伏せが、今年は15回までできるようにと……まだまだ伸びしろが多い逸材。

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Number編集部

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「コケちゃった~(笑)」

 シンデレラガールは、最後まで笑顔だった。

 3月8日に行なわれた名古屋ウィメンズマラソン。日本人トップとなる3位でゴールに飛び込んだのは、2度目のマラソン挑戦となった前田彩里(まえだ・さいり/ダイハツ)だ。2時間22分48秒のタイムは日本歴代8位の好記録であり、'07年の野口みずき(シスメックス)以来、実に日本勢8年ぶりとなる“2時間23分切り”となった。 

「日本人トップは狙っていたけど、まさか自分がなれるとは思わなくて。22分台も、まだ実感が湧かないです」

 レース後はそう振り返った前田だったが、タイムだけでなく、内容も実力の高さを感じさせる走りだった。

 冒頭のコメント通り、15kmの給水ポイントでは他選手と接触し転倒。左膝から出血する予想外の事態もあったが、

「後半どうなるかなと思ったけど、走れないほどではなかったので。コケたときは、『お父さん、何とかして!』って思いながら走りました」

 一昨年に亡くなった父・節夫さんは元本田技研熊本の監督も務めたマラソンランナー。そんな父への想いも馳せながら、アクシデントを乗り切った。30km過ぎのキルワ(バーレーン)のスパートでは離されたものの、その後もペースを落とす事なく完走。一度崩れたリズムを立て直した中での走りは、実際の記録以上の価値がある。

マラソン向けの練習無しで学生新記録。

Number872号に登場していた前田。「オリンピックでメダルをとる!」と宣言した。
 Number872号に登場していた前田。「オリンピックでメダルをとる!」と宣言した。
 

 前田が最初に注目を集めたのは、昨年1月の大阪国際女子マラソン。佛教大学の4年生として臨んだレースで、学生新記録となる2時間26分46秒を記録したことだった。

 マラソンに向けた練習は一切、なし。最高でも30kmまでしか走っていないにもかかわらず、本番ではマラソンでよく言われる「30kmの壁」をやすやすとクリア。未知のはずの30kmからの5kmを参加選手中最速記録で走ってみせた。

「30kmからヨーイドン、だと思って走っていましたから。それまではアップみたいな感じで。大阪では、大学卒業で競技を引退する選手が記念でみんなマラソンに出ていたんですよ。続ける選手は通常出ないんですけど、私は母が走ることもあって、監督にお願いして『私も出たいんですけど』って言ったらOKが出たので」

【次ページ】 母親もランナーで母子でギネスブックに載っている!?

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前田彩里

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