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大躍進の“親友”と比べられ…「『お前も早く一軍で投げろよ』という言葉が一番刺さった」DeNA《2021年ドラ1》小園健太が期す「3年目の覚醒」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/02/13 06:00
2021年にDeNAからドラフト1位指名を受けた小園健太。勝負の3年目を迎えた大器は、覚醒の片鱗を見せている
1年夏の和歌山大会準々決勝・南部戦で決勝打を浴びた試合から高校野球を本格スタートさせ、県内屈指のライバル・智弁和歌山と相対するたびに、分厚い壁をどう打ち破ればいいのか、研究熱心な性格も手伝って、球質向上や新球習得に時間を費やしたことも多かった。
高校2年の冬、小園はこんな練習方法を教えてくれた。
「ボールにどうやったらうまく力が伝わるのか、あれこれ握り方を変えてもうまくいかなくて。(通院している)整骨院の先生にそのことを相談したんです。そうしたら、指先を鍛えるためにサンドボールを使うのもいいって聞いて、それから練習でサンドボールを握って、リリースに力を集約する練習もしていました」
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硬球3個分の重さのサンドボールは、予想以上に指に負荷がかかる。それでもあれこれ握り方を工夫し、最良のリリースポイントを探究した。ブルペンでもコーチに投球フォームの動画撮影をお願いしながら、身体の軸を意識したフォームを何度も研究した。高校野球界では秋は週末ごとに試合があったが、その投球成績を1試合ごとに○回、○球、○奪三振など細かいデータを携帯電話のメモ機能に残すことも当時の小園の日課だった。
だが、プロ1年目はそれすらできなかった。
「(1年目は)本当に自分は何もしていないので……。ずっと投げていなくてフォームもおかしくなっていて、正直、投げ方すらままならない感じでした」
そんな小園に、さらに追い打ちをかけるような出来事も1年目のシーズンにはあった。高校時代、バッテリーを組んでいた松川虎生(ロッテ)の躍動だった。
高校時代の“親友”が突如、スターダムに
とは言っても、松川の活躍が喜ばしくなかったのではない。正捕手の田村龍弘が負傷した影響もあったとはいえ、高卒ながら開幕戦でいきなりスタメン出場を果たすと、4月10日には剛腕・佐々木朗希の史上16人目の完全試合をアシストし「20歳と18歳の最年少バッテリーの快挙」と大きくメディアで報じられた。この試合も含め1年目に一軍で76試合に出場した松川が活躍するたびに「高卒新人捕手では○年ぶり」という見出しが何度も紙面を賑わせた。
松川の存在を、小園はバッテリーを組んでいた間柄以上に「親友」と明かしてきた。中学時代、貝塚ヤングからバッテリーを組み、お互いの家を行き来するほどの仲で、高校時代から互いの誕生日にプレゼントを贈り合うほど強い絆で結ばれている。プロになった今も、オフが合えば一緒に出掛けることも多いという。
「素直にすごいですよね。だって、19歳でいきなり開幕スタメンですよ。世間で言えば思春期ですよ(笑)。ほんまにすごいなって。でも自分は……あの頃はスタートラインにすら立てていなかったですからね」