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《セパンテスト詳報》驚速ドゥカティがサーキットレコードを1秒も短縮、移籍で注目のマルケスは最多ラップで虎視眈々
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/02/10 11:00
ドゥカティ移籍で注目が集まるマルケスは、昨年型マシンで参加ライダー中最多ラップを刻み、マシンの習熟に徹した
2020年の大怪我とホンダのマシンの低迷で、4年間タイトル争いとは無縁だったマルケスは、2月17日には31歳を迎える。最高峰クラス7回目のタイトルを獲得するための移籍という決断は、最高の走りが出来る時間が残り少なくなってきていることを自身も感じているからだろう。テストの舞台となったセパンは過去に優勝が2回だけという、絶対王者が苦手としてきたサーキットのひとつ。開幕戦カタールGPの舞台となるルサイルも優勝1回と苦手とするだけに、序盤は確実に走る作戦なのだろう。マルケスは2日目には参加ライダー中最多の72ラップを刻み、3日間で計173ラップを走行。さらにスプリント、決勝のレースシミュレーションもこなした。
黙々と走るマルケス。怪我から復帰して思うように走れないとき、愛する祖父に「もういいんじゃないか」と引退を勧められた。そのときにマルケスは「おじいちゃん、もう1回だけチャンスをください」と語ったというが、その熱い思いがグレッシーニへの移籍という決断につながった。そして、猛暑の中を汗みどろになって走る姿からは、これまで通算8回のタイトルを獲得してきたライダーの底力が伝わってきた。
当初の目標は5位以内
「ホンダに乗っていたこの数年は例えば2回の走行で限界に達していたが、ドゥカティではもっと周回が必要だと感じている。ガレージにいては上達することは出来ないし、前進するためにも、たくさん走りたいと思った。疲れるし、暑いときはタイムもあがらない。でも、ラインを変えてみたり、いろいろ試してみることはあるからね」
過去2年、勝利から遠ざかっているマルケスは、「周囲の自分への期待はわかっているが、いまタイトル争いを考えてスタートするのは現実的ではない。ペッコ(バニャイア)とホルヘ(マルティン)はとても速いし、彼らから学ぶことはたくさんある。まずは5位以内を目標に走る」と語る。
だが、昨年のバレンシアテストを含め、ドゥカティに乗ってまだ4日目のマルケスの速さに、ライバルたちが脅威を感じていることは間違いない。
今季初のマレーシアテストを終えて、今年は空力戦争が一段と過熱していることを感じた。ドゥカティに追いつけ追い越せと全力を注ぐアプリリアとKTM陣営は、F1で採用されている技術を投入して話題を集めている。そして、リザルト低迷で優遇措置を与えられているホンダとヤマハは、これまで以上にマシン開発に熱が入っているように感じた。
3年連続タイトルを狙うドゥカティは正常進化という形だが、絶対王者マルケスの加入が、なによりの起爆剤となることは間違いない。次回のテストは開幕戦の舞台となるカタール。その結果が楽しみである。