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《セパンテスト詳報》驚速ドゥカティがサーキットレコードを1秒も短縮、移籍で注目のマルケスは最多ラップで虎視眈々
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/02/10 11:00
ドゥカティ移籍で注目が集まるマルケスは、昨年型マシンで参加ライダー中最多ラップを刻み、マシンの習熟に徹した
「今日の午前中は、24年型のバイクで初めてのタイムアタックを試みたが、本当にすばらしかった。56.6秒というタイムは信じられなかった。とても満足しているが、正直に言えば、これはテストにすぎない。でも、この3日間のテストには満足しているし、23年型に比べて大きな進歩を遂げた24年型のパフォーマンスにも満足している。パワー的にはまだまだ余裕があるので、カタールテストではその領域を試してみたい」
バニャイアが初めてタイトルを獲得した22年シーズンは、ニューパーツのテストに明け暮れたこともあり、前半戦で厳しい戦いを強いられた。しかし、この年の後半戦からバイクがまとまり、圧倒的なアドバンテージを築いた。23年はドゥカティを走らせるチームが4チームとなってデータ量も豊富になり、マシンの開発はさらに進んだ。
今回のテストで最新型はワークスチームとナンバー2チームのプラマックに供給され、上位3位までを最新スペックが独占。4番手のアレックス・マルケスと6番手のマルク・マルケスの兄弟は、23年型のチャンピオンマシンで続いた。
王者ドゥカティの進化のポイント
24年型が大きく進化したのはブレーキングの安定性で、バニャイアは、23年型から大きく進歩した部分だと語る。その進化を最大限に生かして、鋭いブレーキングから深くバンクし、マシンを起こして加速する。しかし、テスト1日目、2日目は、随所で攻めの走りを見せながら、ワンラップでアタックをするということはなかった。そのため、1日のテストを終えての順位では「どうしたのだろう?」という声も上がっていたが、コーナーでの切り返しの速さなどでは24年型のドゥカティ・デスモセディチGPを誰よりも早く乗りこなしていることを感じさせた。
やはり注目を集めたのは、ホンダからドゥカティに移籍したマルク・マルケス。初日9番手、2日目14番手と、終日、丁寧なライディングに努め、最終日3日目のアタックで一気に1分57秒270をマークして6番手に浮上した。アタックしたのはこの1回だけで、マルケスは再びセットアップを続けた。
無理をしないブレーキング、本気走りではないことを物語るバンク角。しかし、そこからの立ち上がりではさすがの走りを見せてタイムを上げていく。初日の走行を終えたときに「フロントの安定性が十分ではなかった」と語っていたが、これは23年型デスモセディチGPのウイークポイントがフロントの安定性だったと語るバニャイアの言葉と一致する。しかし、タイムを追わず、着実にセットアップを進めたマルケスの走りは、開幕戦カタールGP以降に焦点を当てていることを感じさせるものだった。