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「髪、長いなぁ」「でも、これでいいんだよ」30年前の“脱・丸刈りブームの主役”がセンバツ甲子園にカムバック…キーワードは「いいオヤジになれ」 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2024/02/02 06:02

「髪、長いなぁ」「でも、これでいいんだよ」30年前の“脱・丸刈りブームの主役”がセンバツ甲子園にカムバック…キーワードは「いいオヤジになれ」<Number Web> photograph by AFLO

2001年に仙台育英高で甲子園準優勝を果たした佐々木順一郎監督。当時はまだほとんどいなかった“脱・丸刈り”がチームのトレードマークだった

 将来、いいオヤジになれ。

 監督として甲子園通算29勝。2度も日本一に王手をかけた、限りなく勝者に近い敗者を味わったからこそ、これは佐々木にとってブレることのない指導理念となっている。

「極論かもしれませんけど、全国優勝をしたからといって人生が終わるわけではないんです。次の日の朝は、普通に訪れるんです。その後の人生のほうが長い、ということなんですね。

 甲子園で優勝して浮かれてしまって、高校を卒業後に足をすくわれるようなことがあれば、『優勝が仇になって、バカな人生を歩んだ』って周りから思われてしまうわけです。だから、『高校でうまくいかなかったとしても人生は長いんだから、将来、いいオヤジになれよ』と選手に伝えているんです」

 指導するグラウンドが仙台育英から学法石川に移っても、様式が変わることはない。

「いいオヤジになるため」の主体性

 練習試合で踊りながらグラウンド整備をし、遠征に来てくれた相手チームを迎え入れる。「エアロビ係」が流行の曲をチョイスし、軽快なリズムに合わせて選手たちが汗を流す。

 そこには、規律があり、自由もある。

 選手たちは今も、いいオヤジになるため主体性を持って野球に励む。

 キャプテンの小宅善叶が言う。

「順一朗先生は『いいオヤジになれ』という最終目標を提示してくださるんで。自分たちも指導者に頼るばかりではなく考えながら行動できる力を持てたら、一歩ずつ大人になっていける実感はあります」

 33年ぶりのセンバツ。

 学法石川が吹かせる風は懐かしくあり、新鮮だとも感じるはずである。

「自分たちのエキスを、甲子園で出していければいいなと思っています」

 チームを導く佐々木は、穏やかに春を待つ。

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