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選手から「あんたに挨拶する筋合いなんてない」と言われ…福島・学法石川“33年ぶりセンバツ出場ウラ話”甲子園準優勝監督が伝えた「勝つ覚悟」
posted2024/02/02 06:01
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
学法石川の監督・佐々木順一朗は眠れない冬を過ごしてきた。期待が芽生えると瞬時に不安が顔を覗かせる。意識すればするほど、消極的なもうひとりの自分もいたという。
2023年秋。東北大会準決勝で学法石川は八戸学院光星に0-1と惜敗した。もうひとつのカードでは一関学院が青森山田に0-4で敗れたことから、翌24年から3校と1校増えた東北地区のセンバツ一般出場枠に滑り込めるのではないかといった、少しばかりの確信を佐々木は抱けていた。
ところが、一関学院を下した青森山田が、決勝戦で八戸学院光星をノーヒットノーランで圧倒しての優勝を果たしたのである。
佐々木は、自らの頭上に垂れ込める暗雲をすぐさま感じとった。
「東北大会では県大会1位通過の高校をふたつ撃破して3勝したりだとか、いろんな好材料が揃っていると思っていましたんで。それが、うちに勝った光星さんがノーヒットノーランで敗けてしまったことで、一気に不安が大きくなりました。ですから、センバツを少し確信できたのは準決勝が終わってからの1日だけです。冬の間は、ネットとかで(東北3校目はどこが選ばれるか?のような)議論を目にしながら『本当に五分五分なんだろうな』と。よく『期待と不安』と言いますけど、不安だらけだったと思います」
学法石川、33年ぶりのセンバツ甲子園出場決定
年が明けた24年1月26日。
センバツ出場校が発表されたこの日、校内の講堂で吉報を待っていたチームは、33年ぶりのセンバツ甲子園出場に喜びを爆発させた。
選手たちを前に、佐々木がマイクを握る。
「こんにちは!」
第一声から始まったねぎらいは簡素だった。
「おめでとう! 嬉しいねぇ。いろいろ言葉を考えたけど、飛びました。ここからは責任が生まれるので、支えてくださったみなさんへの恩返しのために頑張ろう」
映像や活字。佐々木の言葉に触れた者は、彼が饒舌で、ユーモアや機知に溢れた談話を常に残すことを知っている。