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「(批判が)集中し過ぎだと思う」鈴木彩艶21歳を支える先輩・前川黛也の“声掛けの中身”…「TVには映らない」GK3人組の知られざる関係性
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2024/01/26 17:02
アジアカップではここまで全ての試合でゴールマウスを守る鈴木彩艶
実際、インドネシア戦の後半9分の相手FKの場面で果敢に飛び出してボールをキャッチし、即座にパントキックで前線のスペースを狙い、裏抜けする堂安律にピンポイントでロングパスを供給したシーンは、素早い判断と高い技術がなければ生まれなかった決定機。森保監督も「彩艶だからこその飛距離はチームとして共有している。武器として使えるということを選手たちがあの状況で表現してくれた」と評価した。
指揮官は、イラク戦から8選手をターンオーバーしたインドネシア戦でも鈴木を起用した意図を訊かれると、「前川という経験のある選手を起用する選択もあったが、まだ彼(鈴木)は若く、これから多くの経験を積んでさらに大きくなってもらいたい。ある意味厳しいが、試練を与えて勝利に貢献して成長してもらいたい思いがあった」と説明していた。
先輩・前川は熱い言葉で“彩艶批判”に反論
指揮官の言葉通り、厳しい環境にさらされている鈴木だが、ドーハで合宿生活を送っている今は心強いGK仲間がいる。
その中で胸の熱くなるような男気を見せているのが最年長の前川黛也だ。昨季J1リーグの優勝GKである前川は、2失点を喫して敗れたイラク戦から一夜明けた20日の取材対応で、鈴木に批判が集中していることについて「誰が言っているか分からないけど、全然ミスでもない」と先陣を切って反論した。
「その前のところでの失い方や、そこまで進入されたことが問題。もちろんキーパーはキーパーで修正しないといけないけど、必要以上に言われ過ぎていると思う。外野が言うのは簡単だが、あのアウェーの声援やプレッシャーの中で、ビルドアップやリスクケアも安定していたし、彩艶が救っているところもたくさんあった。なのに、一個で批判される。それはプロである以上仕方ないことかもしれないけど、集中し過ぎだと思う」
毅然とした口調でそう言った前川は、第3戦インドネシア戦の後には、鈴木のパフォーマンスについてこのように評した。
「90分を通して、すごく良いフィードやハイボールの処理があった。最後に失点したところはチーム全体のところでニアにそらされての失点。そこの修正は個人個人がしていかなければならない」
前川の気遣い「特別な声掛けはしていない。プロなので」
その指摘通り、インドネシア戦での鈴木はほぼ立て直していた。前川は続けて、「次から負けてはいけない戦いになっていく。課題の部分をもっと突きつめてやっていけば勝てると思う。これからも彩艶には自信を持ってやって貰いたいし、僕も良い準備をしていつでも出られるようにしていく」と決意を述べた。