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波紋の佐々木朗希「ロッテは踏み台か」「密約あったのでは?」の誤解リスク…なぜファン冷ややか? 松井秀喜、大谷翔平の“メジャー挑戦時”は…
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/26 06:03
波紋を呼んでいる佐々木朗希「メジャー挑戦」の報。なぜファンは冷ややか?
朗希の昨年までの成績はこうなる。
佐々木朗希(ロッテ)
実働3年 46試合19勝10敗0セーブ 283.2回 63自責点 防御率2.00
優勝0回 2ケタ勝利0回
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一昨年に完全試合を達成。昨年は防御率1.78と安定感は抜群だが、15試合の先発(7勝4敗)に留まった。1年間ローテーションを守った年はない。ポスティング移籍の中で、“日本のエース”と呼ばれた投手の渡米前年の成績を並べてみよう。
松坂大輔 25試合17勝5敗0セーブ 防御率2.13(2006年)
ダルビッシュ有 28試合18勝6敗0セーブ 防御率1.44(2011年)
田中将大 28試合24勝0敗1セーブ 防御率1.27(2013年)
前田健太 29試合15勝8敗0セーブ 防御率2.09(2015年)
山本由伸 23試合16勝6敗0セーブ 防御率1.21(2023年)
彼らは圧倒的な結果で数多のタイトルを獲得し、“無双状態”で日本を飛び立った。
もし今オフに佐々木朗希がポスティングでメジャー移籍していたら、ロッテを踏み台にしただけだと多くのファンは怒っただろう。たしかに、他人が佐々木朗希の人生に口出しする権利はない。
「なぜ批判的?」国民性も関係か
しかし、ビジネスの損得勘定だけでは割り切れない感情がファンには渦巻く。プロ野球は単なる営利活動の側面だけではなく、観客の心を掴むことで成り立つエンターテイメントである。それゆえ、球団や選手はその反応に敏感でなければならない。ファンの主な声は、日本人の国民性に起因している。国土交通省は日本人の感性(美意識)に関して『国民意識調査』(2019年2月実施)をしている。その中で、以下の3つが「とてもそう思う」「ややそう思う」のベスト3を占めた。
77.1%(25.3%+51.8%)他者を尊重し思いやりの気持ちを持つ
77.0%(24.0%+53.0%)伝統的な文化や風習を尊重し、次世代に引き継いでいく
75.9%(23.5%+52.4%)家族やコミュニティの絆を大切にし、調和と協調を重視する
※パーセンテージは合計(とてもそう思う+ややそう思う)
まとめれば、日本人は「他者、伝統的な文化、風習を尊重し、絆を大切にし、調和と協調を重視する」。良い悪いではなく、このような美意識を持つ傾向がある。
松井秀喜、ダル、大谷…「渡米前の言葉」
過去のメジャー移籍選手は、会見での発言がファンの心を掴み、日本を離れても応援したいと思わせた。巨人の4番・松井秀喜は02年オフのFA宣言時に〈何を言っても裏切り者と言われるかもしれないが、いつか松井は行ってよかったと思われるように頑張るしかない〉(※1)と覚悟を示した。ダルビッシュ有は〈2005年に入団して、いきなりやっちゃいました。最初の過ち(1年目のキャンプで未成年ながら喫煙)がありながら、初登板のヒーローインタビューで温かく迎えてくれた。この7年間ずっと支えられっぱなしでありがたい〉(※2)と具体的なエピソードを交えて、ファンへの感謝を述べた。